1. 携帯基地局の新聞報道 地方レベルでは活発も中央は自己規制

携帯電話の基地局問題に関連する記事

2012年10月24日 (水曜日)

携帯基地局の新聞報道 地方レベルでは活発も中央は自己規制

かつて携帯電磁波の人体影響は新聞が自己規制して報じないテーマのひとつだった。しかし、17日に判決が下された延岡大貫訴訟では、それが完全に崩壊した。

判決は住民側の敗訴であったが、新聞各社は判決を厳しく批判する視点の記事を掲載した。住民運動の団体から、わたしが入手した判決に関する記事は、全部で15本。この中には、単に判決の結果を伝えた記事もあるが、大半は判決を批判する視点から書かれている。KDDIよりも住民側の主張を大きく紹介している。

ちなみに判決の特徴は、携帯基地局の周辺に住む住民のあいだに深刻な健康問題が発生している事実を認めたものの、その原因は携帯電磁波によるものではなく、精神的なものであると認定した点だ。

精神的なことが原因で、たとえば複数の住民が鼻血に悩まされることなど普通はありえず、太田敬司裁判長の判断が科学を無視したずさんなものであることは言うまでもない。

手短に主な記事の見出しをピックアップしてみよう。

【宮崎日日新聞】  「見えないムチで、日夜たたかれている。」18日付け

【夕刊デイリー】?? 「臆病な判決」症状認めるが因果関係否定? 18日付け

【毎日新聞】  「原告住民に怒りと失望・身体症状存在は認める」18日付け

【読売新聞】  「原告、主張認められず落胆」? 18日付け

【朝日新聞】  「『見えぬムチ いつまで』原告ら無念さにじむ」18日付け?? 「国など実態調査を」18日付け

【西日本新聞】? 「『苦しみ なぜ分からぬ』敗訴の住民 怒りと失望」18日付け

ただ、地元を対象としてものだった。全国版で判決の結果を報じた社もあるが、全体としてみると、携帯電磁波に関する報道は、現在のところローカルの域を出ていない。

◇基地局問題の報道の軌跡  

携帯基地局の問題が浮上してきたのは、1990年代の後半である。熊本市で基地局の撤去を求める裁判が起こされたのを皮切りに、新世代の公害として携帯電磁波に関心が集まるようになった。

これに対して多くのメディアが、電磁波問題と宗教(白装束集団など)を結びつけることで、電磁波による健康被害という概念を非科学的なものとして「宣伝」した。このような状態が延々と続いた。

今世紀に入ってから、『週刊金曜日』がこの問題を取り上げるようになった。その後、海外で携帯電磁波の危険性を指摘する報道が盛んになってくると、その影響が日本でも現れた。

その結果、まず、雑誌が電磁波問題を報じるようになった。週刊東洋経済、週刊新潮、女性自身、サイゾーなどである。

こうした動きと並行して、新聞各社が延岡大貫訴訟をローカルのレベルで報じるようになったのである。しかし、携帯基地局は、全国のいたるところに設置されているので、一地方の問題ではない。