2019年11月18日 (月曜日)
5Gの学習会に31名参加、5G問題を批判的な観点から報道できない背景に何があるのか?
電磁波問題に取り組んでいる市民運動体・ガウスネットが主催する学習会「新世代の公害-5G」が、17日に東京板橋区のグリーンホールで開催された。参加者は31名。わたしも講師のひとりで、携帯電話の基地局周辺で発生している健康被害の実態を報告した。そのほかに、ガウスネットの代表である懸樋哲夫さんと、東京理科大学の元教授・渡邉建さんが講演した。
3人の講演の後に行われた質疑応答の場では、5Gによる電磁波が人体に悪影響を及ぼすリスクを知らせる報道がほとんどなく、大半の人は5Gと健康リスクを結び付けて考えるに至っていないという認識を共有した。それを前提に、どう対処するか質問を投げかけられ、わたしはメディアを抜本的に変える必要性を訴えた。
言葉を変えると、強力なジャーナリズムが不在になっているので、5Gを推進している産業界の暴走を阻止できないと回答した。報道できない背景を考察するさい、わたしは記者個人の責任よりも、産業界、政界、メディア企業が連動して成立している構造的な問題を指摘したい。
講演の中でも言及したが、5Gにより利益を得る企業や業界団体は、政界へ多額の政治献金を行っている。自民党だけではなく、旧民主党の時代には、労働組合の政治団体から民主党議員に多額の献金が行われていた。議員推薦までやっている。
つまり政界と産業界が癒着している構図があるのだ。
さらに総務省などの中央省庁から、電話会社などに多人数の元官僚が天下っている。5G利権を持つ産業界が官僚たちの退職後の再就職先になっているのだ。
ここに、5Gの推進、あるいは無線通信網の普及という国策が浮上してくる客観的な原因があるのだ。
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メディア企業のビジネスモデルにも根本的な問題がある。周知のように主要メディアのほとんど全社が、広告やCMに依存した経営体制をとっている。しかも、大口広告主が電話会社や電気メーカー、それに自動運転の開発に余念がない自動車メーカーなどで占められている事実がある。
さらに新聞社やテレビ局などメディア企業の一部は、記者クラブを通じて公権力とも親密な関係にある。安倍首相と会食を繰り返している新聞業界のドンもいた。新聞業界がこの人物を正面から批判できないところに、日本の新聞ジャーナリズムの限界があるのだ。
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①政治献金を通じて産業界と政界が一体化し、天下りを通じて中央省庁と産業界が癒着している実態。②広告を通じて、メディアと産業界が友好関係を維持している実態。③さらには首相とメディア企業幹部の会食を通じて、あるいは記者クラブと中央省庁のあうんの関係を通じて、メディア企業と公権力の間に情交関係が成立している実態。
ここに5Gを推進する国策が成立する客観的な原因があるのだ。しかも、そのプロパガンダは、オリンピックやラグビーのワールドカップなどに便乗することを前提としている。実は、イベントは効果的なPR戦略なのである。だからオリンピックを日本に招致したのである。
5Gの普及により高画質な画像でオリンピックを観戦できるという方向性で大衆を洗脳できれば、5Gが内包している他の問題は闇の中へ消されてしまう。スポーツはこのようにして政治利用されるのだ。
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メディア研究者の中には、日本のジャーナリズムがほとんど機能していない原因を記者個人の職能や意欲の欠落という観点から説明する人が少なくない。それゆえに記者それぞれが、東京新聞の望月記者のようになれば、ジャーナリズムは変わると主張する。
この考えは間違っている。メディアの堕落は記者個人の心がけの問題ではない。ビジネスモデルそのものに構造的な欠陥があるからにほかならない。