2019年05月17日 (金曜日)
【書評】荻野晃也著『身の回りの電磁波被曝』、スマホで使われる電磁波にはなぜ遺伝子毒性があるのか?
荻野晃也氏の『身の回りの電磁波被曝』(緑風出版)が出版された。著者の荻野氏は、京都大学の元講師で、スリーマイル島原発事故(1979年)の調査が本格化した時期に、米国から日本へ電磁波問題を紹介した最初の研究者である。多数の著書があるが、本書は、電磁波による人体への影響をさまざまな角度から指摘している。
5Gの導入が世界規模で進むなか、皮肉にも電磁波が身体に及ぼす影響が否定できなくなっている。かつては、電磁波(放射線)の中でも、エネルギーがより高い原発のガンマ線やレントゲンのエックス線は危険だが、エネルギーの低い家電から放射される超低周波の電磁波は安全と考えてられてきた。しかし、現在ではエネルギーの大小には関係なく、遺伝子毒性があるとする説がほぼ定着している。
しかし、電磁波問題は、背後に電話会社、電機メーカー、自動車メーカー、それに軍事産業などの巨大利権が絡んでいるので、ほとんど報じられることはない。
本書が扱っているテーマは幅広く、すべてを紹介するわけにはいかないが、ここでは大半の人々が利用している携帯電話やスマホで使われるマイクロ波についての荻野氏の見解を紹介しよう。
◇自然界に存在しない「変調電磁波」
ほとんど知られていないが、携帯電話・スマホで使われるマイクロ波は人工的に加工されている。専門家の間では、「変調電磁波」と呼ばれている。何が目的で、どのように変調されているか、荻野氏は次のように述べている。なお、ここでいう「高周波」とはマイクロ波のことである。
高周波の電波を「搬送波」というのですが、基本となって運搬に使用される高周波・成分のことです。その「搬送波」に色々な情報を載せるために「変調」という手法が使用されるわけです。その「変調」には「周波数・変調」「振幅・変調」「位相変調」「パズル・変調」などが行われます。
「周波数・変調」は搬送波と異なる低い周波数・成分を混ぜる方法で、「振幅・変調」は低周波の振幅(つまり電波の強さ)を変化させて搬送波とともに情報を送る方法です。「位相変調」は位相を、「パルス・変調」は周波数であれ振幅であれ、パルス状態の低周波範囲だけに限定して送信する方法です。携帯電話の大普及によって初めて「変調・電磁波」が心配されるようになってきたといえるでしょう。
同じ高周波の電磁波とはいえ、たとえば電子レンジで使われているマイクロ波と、携帯電話・スマホで使われるマイクロ波では、危険の度合いが格段に異なるのだ。これまで人類が被曝したことがない電磁波という意味において、リスクが高い。
◇21世紀の新世代公害
電磁波問題は幅が広く、携帯電話・スマホに関連した問題以外にも多岐にわたる。化学物質による人体汚染とならんで、21世紀の新世代公害にほかならない。
タイトル:身の回りの電磁波被曝
著者:荻野晃也
版元:緑風出版
※荻野氏は、6月22日に、東京都の板橋グリーンホールで、「生活の中にひそむ電磁波被曝による身体への影響」と題する講演を行う。事前の予約なしに、だれでも参加できる。詳細は、次のURLで。