1. 米国立環境衛生科学研究所によるマイクロ波の安全性に関する研究結果、高リスクを否定、背景にアップルやグーグル、軍事産業の権益

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2018年02月19日 (月曜日)

米国立環境衛生科学研究所によるマイクロ波の安全性に関する研究結果、高リスクを否定、背景にアップルやグーグル、軍事産業の権益

このところ携帯電話の基地局設置をめぐるトラブルが増えている。今年に入ってから、筆者のところに2件の相談があった。このうち1件は、早々に解決した。相談件数の増加は、マイクロ波の危険性が否定できなくなった証にほかならない。

マイクロ波に遺伝子毒性がある可能性については、2011年にWHOの外郭団体・国際癌研究機構がそれを認定している。日本の総務省は、マイクロ波の遺伝子毒性を否定しているが、それほど簡単に否定できるものではない。むしろ疫学調査では、両者の因果関係は明らかである。

マイクロ波の安全基準については、各国の政府レベルとそれ以外の行政区との間で大きな開きがある。その理由については後述するとして、まず、実際の規制値を紹介しよう。

日本:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

カナダ:1000 μW/c㎡

オーストリア:900μW/c㎡

EU:0.1μW/c㎡[屋外]、0.01μW/c㎡[屋内](提言)

また、2012年に発表された著名な研究者によるバイオ・イニシアティブ報告では、次のような数値を提唱している。

バイオ・イニシアティブ報告:0.003~0.0006μW/c㎡ (1.8GHz)

数値の違いに注目してほしい。「1000」と「0.1」、あるいは「0.003~0.0006」では歴然とした違いがある。この違いは遺伝子毒性を考慮したか否かの違いと言っても過言ではないが、実は政治的な別の理由もあるようだ。

実は、国レベルで規制値を比較してみると日本だけが1000 μW/c㎡という異常に高い数値が設けられているわけではない。米国やヨーロッパでも、1000μW/c㎡、あるいは900μW/c㎡といった高い数値になっている。

これでは実質的には何の規制にもなっていないので、EUなどは独自の基準を設けているのだ。

が、1000 μW/c㎡といったレベルの高い数値には、政治的な別の理由もあるのだ。と、いうのも0.01μW/c㎡でも、通信は十分に出来るからだ。こについて、問題の所在を示唆するある研究結果が先日公表された。

◇マイクロ波の高リスクを否定

2月2日に米国立環境衛生科学研究所が進めていたマイクロ波のリスクを検証するプロジェクト(NTP、米国国家毒性プログラム)が最終報告を出した。この研究は、中間報告の段階では、マイクロ波のリスクを指摘していた。マウスを使った実験などを根拠に、マイクロ波は特に脳腫瘍と心臓の腫瘍を発症させるリスクがあると発表していたのだ。

ところが最終報告では、高いリスクがあるとは言えないと結論づけた。当然、中間報告との違いが問題になるわけだが、米国の『MICRO WAVE NEWS』によると、このプロジェクトの途中で研究員の主要人事が骨抜きにされたという。また、マイクロ波の問題は、かつては電話会社の権益がらみだったが、現在では、米国の空軍や海軍、それにアップル、グーグル、マイクロソフトなどの企業権益と関係があることも指摘している。トランプ政権の下では、ある意味では当然の結果とも言えるのだ。

政府レベルの規制値と、EUや研究機関が提唱する規制値に著しい差がある理由は、前者が将来的な軍事技術の開発や自動運転の開発などを考慮に入れているからだと言えるだろう。

ちなみに規制値が0.01μW/c㎡でも、通信は十分にできる。それにもかかわらず国家レベルでは、1000μW/c㎡などというバカの数値にしているのは、産業の育成という別の意図があるからだろう。国民の生命は第2である。

【参考記事】What Changed at NTP?