1. 第5世代移動通信システム に東電が参入、懸念される高周波電磁波による人体影響

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2017年07月19日 (水曜日)

第5世代移動通信システム に東電が参入、懸念される高周波電磁波による人体影響

「G5」とは、第5世代移動通信システム のことである。携帯電話は1990年代から普及がはじまり、世代が進むごとに「進化」してきた。最初は電話機能だけだったが、静止画や動画が送れるようになり、通信のスピードもどんどん上がっていった。そしていま、本格的にG5導入への動きが始まった。

こうした動きに東電が便乗しよとしているのを読者はご存じだろうか。「5Gの基地局を設置する場所として、電力を送る鉄塔を貸し出す事業に本格的に乗り出す方針」(NHKニュース)を固めたという。

しかし、この計画に関して、日本のメディアがほどんど報じない重大問題がある。それは電磁波による人体影響である。欧米では当たり前に報じられている電磁波のリスクが、おそらくは大口広告主である電話・電気・電力関連の企業への配慮から、日本ではほとんど報じられていない。

国民は重大なリスクに晒される。

◇「変調電磁波」とは

G5には、ある特徴がある。携帯電話(スマホを含む)の通信には、マイクロ波と呼ばれる領域の電波(電磁波)が使われているのだが、G5では、従来のものよりも高い周波数帯が使われる。

電磁波は、周波数が高くなると、より直進性が強くなる。従って、室内へ入りにくい「欠点」がある。一方、周波数が低くなると、直進性が抑制されて、部屋の中にも入りやすくなる。こうした情況を踏まえて、携帯電話の電磁波は、高い周波数と低い周波数を混合させた「変調電磁波」が使われているのだ。

「変調電磁波」は、人工的に加工したものであるから、人体にどのような影響があるのか、まだ分かっていない。特に、長期に渡って被曝したときの影響は未知数だ。と、いうのも地球上にこのような電磁波が登場し、それを日常的に使うようになって三〇年にも満たないからだ。

WHOの外郭団体である国際がん研究機関(IARC)は、マイクロ波に発ガン性がある可能性を認定(2011年)している。

東電が電話会社に協力することで、東電が所有している鉄塔などに、次々と基地局が設置される可能性が高い。これまで筆者が基地局設置のプロセスを取材した限りでは、電話会社は近隣住民の承諾を得ないまま、一方的に設置を進めてきた。同じことが起こる可能性が高い。

◇全ての電磁波にリスク

電磁波とは、簡単に言えば電波のことである。電波が磁場や磁気を伴っているから、電磁波と呼ばれているのだ。

意外に知られていないが、原発のガンマ線やレントゲンのエックス線も広義の電磁波である。欧米では放射線と電磁波は区別はしない。

従来は電磁波の中でも、エネルギーが高いガンマ線やエックス線は、人体影響があるとされてきた。これはすでに定説になっていて否定するひとはいない。日本でも、福島第一原発からのガンマ線が問題になっている。

ところが最近は、エネルギーの低い電磁波、たとえばマイクロ波や家電の低周波電磁波にも、遺伝子毒性があるとする説が有力になっている。

このあたりの事情について、電磁波研究の第一人者である荻野晃也氏は、『携帯電話基地局の真実』の中で次のように述べている。

これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、「電離放射線(黒薮注:電離放射線とは、ガンマ線やX線を指す。詳しくは後述する。)が特に発癌の危険性が高い」と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で「電磁波全体が危険な可能性」があり、「共通した遺伝的毒性を示す」と考えられるようになってきたのが、現在の「電磁波問題」の本質だといってよいでしょう。

また、北里大学の名誉教授・宮田幹夫氏らがまとめた『生体と電磁波』にも、次のような記述がある。

エックス線もガンマ線も電磁波である。人工の電磁波に比べてエネルギーが非常に大きいため、物質への浸透性が強く、生体へのダメージも非常に大きい。しかし、極低周波から超高周波まで、人工電磁波も生体へのダメージは大きく、身近にある場合は障害を生じる。放射線と電磁波はメカニズムが異なるが、同じように体内にフリーラジカルを生産し、DNAを破損してがんの原因を作る点では、同じような環境汚染源としてみることができる。

広島と長崎に投下された原爆の影響で、癌や白血病が増えたこともあって、かねてからガンマ線と癌の関係は定説となってきたが、実はマイクロ波など他の種類の電磁波でも、遺伝子に対する見解が変化してきたのである。

◇日本の規制値の愚

総務省は、マイクロ波の規制値を設置している。ところが現在の規制値には大きな問題がある。まず、数値を電磁波問題の研究が盛んな欧米と比較してみてほしい。

日本:1000μW/cm2

イタリア:10μW/cm2

スイス:6.6μW/cm2

EU:0.1μW/cm2(提言値)

ザルツブルグ市:0.0001W/cm2(室内目標値)

日本の規制値は、規制になっていないのが実情である。日本の規制値は、瞬時にマイクロ波を浴びた場合の人体影響(たとえば火傷)を基準にしているのに、対して、EUなどは、長期に渡って被曝した場合の遺伝子毒性などを想定した数値にしている。それが数値の違いに現れているのだ。

それにもうひつと電話会社の意図的な戦略がある。それは住民から、基地局を撤去するように要望が出された時の対策である。電話会社は、まず電磁波強度を測定する。そして、たとえば1μW/cm2だと知らせる。そのうえで、「弊社は総務省の基準値の1000分の1ですから、絶対に安全です」とウソをつくのだ。

筆者はこのような例を無数に見てきた。

電磁波で問題になるのは、一次的な被曝ではなく、遺伝子毒性の方なのだが、こちらは完全に無視されているのだ。

ちなみに現在は、EUの基準でも十分とはいえないとする見方が有力だ。

◇複合汚染の考え方


 さらに日本の規制値には、次のような問題点がある。それは複合汚染という視点が完全に欠落して、電磁波による単一の人体影響しか考慮に入れていないことである。

米国のケミカル・アブストラック・サービスが登録する新しい化学物質の数は、一日で優に一万件を超える。もちろん全てが有害とは限らないが、これらの化学物質が外界に出て、環境や人体に入り込んでくる。従って、汚染状態が同じということは有り得ない。常に変化している。

人体も生活環境も、その中身は刻々と変化していて、静止の状態にはなっていない。これが基本的な科学の物の考え方なのだ。

当然、同じ強度の電磁波を被曝しても、化学物質による汚染の度合いで個人差が生まれる。環境問題では、動物実験の結果よりも、疫学調査を重視しなければならないゆえんにほかならない。動物実験は、試験装置の中の環境であるから、参考にしかならないのである。

ところが総務省は、電磁波だけを切り離して、しかも、長期影響を考慮せずに基準値を設置しているのである。

電磁波問題の背景には、巨大な利権がからんである。それゆえに報道されないのである。