1. NTTドコモが住民に対して説明会、住民の命よりも企業の利益を優先、基地局設置工事の続行を宣言

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2016年10月31日 (月曜日)

NTTドコモが住民に対して説明会、住民の命よりも企業の利益を優先、基地局設置工事の続行を宣言

NTTドコモと東京板橋区小豆沢の住民たちの間で起きている携帯基地局の設置をめぐるトラブルで、NTTドコモ側は、30日、住民説明会を開いた。当初、NTTドコモ側は、戸別に1対1で説明をする方針だったが、住民たちの要望に応えて、団体での説明に応じた。

筆者は、住民側からの要請に応じて、説明会に参加した。

NTTドコモ側の説明には事実と違っていることや、「企業秘密」を理由に大事なことを説明しない場面もままあった。動画に撮影しているので、準備ができしだいにインターネットで公開したい。利潤の追求しか頭にない、電話会社の論理がよく分かる。

◇法律を上段にかざして基地局設置を正当化

筆者が最も驚いたのは、マイクロ波の規制値をめぐる説明だった。世界の国々や都市の規制値は次のようになっている。

日本:1000μW/cm2

イタリア:10μW/cm2

スイス:6.6μW/cm2

EU:0.1μW/cm2(提言値)

ザルツブルグ市:0.0001W/cm2(室内目標値)

EUやザルツブルグ市は、極めて低い数値を設定しているが、国レベルでは日本なみの高い数値を設定している。それを根拠に、NTTドコモ側は国が定めた基準を順守すれば安全だというのだった。

しかし、ヨーロッパでは、国の基準とは別に、目標値や提言値を別に定めている自治体があり、こちらの方が重視されているのだ。特にEUの提言値は、強い影響力を持っている。

ザルツブルグ市:0.0001W/cm2(室内目標値)について、どう思うかと筆者が質問したところ、2005年に廃止されたと答えた。

「2005年に廃止された」という話を筆者は初めて聞いた。筆者が勉強不足なのか、さもなければNTTドコモ側が嘘をついたことになる。少なくとも筆者は、そんな話を聞いたことはない。

改めて言うまでもなく、住民側は基地局の設置工事の中止を強く求めた。しかし、NTTドコモ側は、法律と総務省の防護指針(1000μW/cm2の基準値)を遵守して、計画を前に進めると宣言した。

◇NTTドコモの基地局をモデルに早急な疫学調査が必要

説明会に参加した理学博士のA氏は、説明会が始まる前の時間帯を使って、基地局(稼働はまだしていない)周辺のマイクロ波の密度を測定した。その結果、確かに電波が届きにくい地区があることがわかった。地形が丘陵地帯であることが、その原因である。

NTTドコモに対して、基地局の設置を希望する住民たちもいるようだ。

ここに基地局問題の難しさがある。基地局の設置を望む住民と、望まない住民の対立を生み、最悪の場合は地域社会を分断することにもなりかねない。

基地局を設置した場合、その近辺に住む住民は、健康被害を受けるリスクが高くなる。しかも、健康被害を受けて、損害賠償裁判を起こしても、現在の段階では、マイクロ波と健康被害の関係が医学的に立証されていないので、裁判所も基地局の撤去を認めない。

こうした司法の在り方が背景にあり、日本では、医学的な根拠が立証されるまでは、たとえ基地局周辺の住民のあいだで健康被害が多発しても、基地局の操業をそのまま続けてもいいことになっている。国家権力を利用した恐ろしい論理である。

基地局周辺の住民が、結果的に人間モルモットにされるのだ。

本来は、この種の人命にかかわる問題は、予防原則に基づいて、健康被害が多発した事実があれば、たとえ医学的な根拠が立証されていなくても、一旦、基地局の操業を中止するのが、原則なのである。さもなければ、被害を拡大させてしまうリスクがあるからだ。

板橋区の基地局問題で、特に憤っている層は、新設の基地局の直近にある高齢者マンションの住民たちである。わずか20メートルの距離から、マイクロ波の直撃を受けることになるからだ。高齢者だから、生命を軽視してもいいことにはならない。

今後、NTTドコモの基地局を抽出して、それを舞台に疫学調査を行うように、医療機関や専門家に働きかける必要もあるだろう。

ちなみにNTTドコモは、2005年に筆者が居住している朝霞市の集合住宅の真上に基地局設置しようとしたことがある。この時も、集合住宅の住民が設置推進派と反対派に分断された。が、結局は設置できず、近くの埼玉土建労働組合のビルの上に設置したのである。

埼玉土建労働組合に対しては、周辺住民の健康被害の実態調査を申し入れる必要があるだろう。今必要なのは、疫学調査なのだ。