佐賀新聞の元店主が「押し紙」裁判を提起、約7100万円の損害賠償を請求、法廷で審理されるABC部数「偽装」の手口、読売・真村訴訟の弁護団が代理人に
「押し紙」で損害を受けたとして、佐賀新聞の元販売店主が6月3日、佐賀新聞社を相手どって約7100 万円の損害賠償を請求する裁判を佐賀地裁で起こした。元店主は、「押し紙」の負担で販売店経営が悪化し、佐賀新聞に対して執拗に「押し紙」の中止を求めていた。新聞社の「押し売り」問題が法廷で審理されることになった。
「押し紙」の実態と損害は次のPDFに示した通りである。
「押し紙」率は、原告が店主になった2009年4月の段階では、10%だったが、ピーク時の2012年6月には19%に増えている。原告が年間に被った損害は、年度によって異なるが年間に、約460万円から約1000万円だった。多額の借金を背負わされて、昨年12月に廃業に追い込まれていた。
◇ABC部数「偽装」の恐るべき手口
訴状によると、佐賀新聞社は、「押し紙」部数を隠すために、ABC部数を偽装するための工作を原告に指示していた。これについて訴状は次のように述べている。
公査を受ける時期になると、被告佐賀新聞社から各販売店へ公査に備えるように連絡がされ、対象となる販売店には1~2日前にはABC協会が公査を告知するため、その販売店に対して被告佐賀新聞は次のような具体的な作業を指示する。
①足りない読者数を穴埋めするために過去の読者を現在の読者のようにみせかけたり、実在する人物を架空の読者に仕立て上げたりする。
②1年ないし半年分の架空の領収書を印刷させ、半券を切り取って破棄し、残った半証を過去の領収書の控えの間に挟ませ、各月の売上金額や配達料を支払った金額、配達部数などの数字もすべて作り変えさせる。
③あとは公査当日に店舗に残っている押し紙(残紙)を必要数以外は隠させ、前日のチラシの作業の終了時には定数近くまで折込機会のカウンターだけ回させる。
④日々の紙分けの作業に使う手板(各配達員に渡すべき部数を書く道具)の数字も各月ごとに不審な点が無いように作り変えさせる。
原告の店舗にABC協会の公査が入った平成23年5月のときも上記の具体的な指示を佐賀新聞より受けており、また被告佐賀新聞は普段から各販売店に上記の隠蔽工作を指導している。
◇新聞社サイドが「押し紙」減部数を指示
「押し紙」は1部も存在しないというのが、従来からの新聞社の主張である。しかし、訴状によると佐賀新聞社は、販売店に指示してABC部数を偽装させているうえに、2013年3月には、全販売店を対象に、全体で搬入部数を2000部減らしている。これは佐賀新聞社が搬入した新聞がすべて配達されていないことをみずから把握していた証拠にほかならない。
さらに翌2014年6月には、やはり全販売店を対象に、搬入部数を3000部減らしている。原告店主の販売店の場合は90部が減数の対象になった。
◇読売・真村訴訟の弁護団が代理人に
新聞社の「押し紙」が初めて司法による認定を受けたのは、2007年である。読売新聞社を相手に、販売店が提起した真村訴訟の判決で、福岡高裁が読売による「押し紙」政策を認定し、その後、判決は最高裁で確定した。
今回の佐賀新聞の「押し紙」裁判では、真村訴訟を担当した江上武幸弁護士らが原告の代理人を務める。
※なお、訴状は準備ができしだいメディア黒書で全文を公開する予定。