1. 「押し紙」の存在を示す西日本新聞の内部資料を入手、崩壊へ向かう新聞販売店経営

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2016年04月13日 (水曜日)

「押し紙」の存在を示す西日本新聞の内部資料を入手、崩壊へ向かう新聞販売店経営

「これからどんどん店主の自殺が増えるでしょう」

こんな訴えが、新聞販売店の店主からあった。新聞の没落が止まらないなか、販売店主らの間に絶望感が拡がっている。元凶は、「押し紙」である。

折込広告の需要が好調だった時代には、販売店は「押し紙」があっても、折込広告の水増しで「押し紙」の損害を相殺できたので、なんとか経営を維持できた。

たとえば1000部の「押し紙」があっても、折込広告を(一種類につき)1000枚水増しすれば、「押し紙」の損害を相殺できていた。ところがその折込広告の需要が低迷して、新聞販売店の経営基盤そのものが揺らいでいる。

しかし、新聞代金の納金を怠るわけにはいかない。怠れば、たちまち新聞社から担当員がやってきて、しつこく入金を迫る。期限までに入金しなければ、容赦なく新聞の供給を止めてしまう。

新聞は「味覚期限」が1日であるから、在庫品を配達するわけにはいかない。その結果、新聞販売店は入金を履行するために、借金まみれになったあげく、一方的に廃業に追い込まれる。自殺者もでる。

実態は昔からなにひとつ変わっていないが、最近は店主の方から「こんなばからしい仕事はできない」と言って、みずから廃業するケースが増えている。

◇西日本新聞の内部資料

最近、西日本新聞の「押し紙」を立証する決定的な内部資料を入手した。販売店ごとに、店主が注文した部数と、実際に新聞社が搬入した部数を記録したエクセル・ファイル形式のものだ。訪店した際に、担当員がPC上にこのデータをアップした後、消し忘れていたのを、店主が保存したものである。

この資料の公表方法は今後、検討していくが、少なくとも次のことが言える。

①同社が注文部数を上回る部数を販売店に搬入している事実。

②「①」は、「押し紙」を禁じた独禁法の新聞特殊指定に抵触している。

③昨年、西日本新聞の元店主が起こした「押し紙」裁判で、福岡地裁は原告の店主を敗訴させたが、判決が間違っている可能性が高くなった。資料により、「押し売り」が完全に立証できる。

実は、わたしはこの資料の存在を3、4年前から聞いていた。しかし、入手することはできなかった。店主さんが提出をためらっていたからである。

ところがあまりにも凄まじい経営実態を前に、内部告発の決意を固められたのだ。

「今、おおやけにしなければ、タイミングを逸する」

販売店の経営は追いつめられているのだ。

◇「押し紙」小屋の存在

「押し紙」問題は戦前からあったが、病的な異常さを呈してきたのは、今世紀に入ってからである。搬入される新聞の半分が「押し紙」だという内部告発を受けるようになった。

最初、わたしは「ガセネタ」だと思って取材しなかった。ところが2002年に産経新聞の店主・今西龍二さんが起こした「押し紙」裁判の資料を見て、状況の変化に気づいた。今西さんの店では、4割から5割が「押し紙」だった。

今西さんは入金が出来なくなり、銀行から自宅を取り上げられた。「押し紙」小屋の存在や「押し紙」回収の伝票の存在も明らかになった。

その後、次々と同じような内部告発があり、今では、7割が「押し紙」と聞いても驚かない。特に毎日新聞の実態が凄まじい。

しかし、日本新聞協会は、相変わらず「押し紙」の存在を否定している。「押し紙」の存在を認めたら、広告代理店に対して広告主から損害賠償の訴訟が次々と起こされるリスクがあるからではないか。

「折込詐欺」の主犯は、広告代理店である。販売店ではない。広告代理店の営業マンが架空の新聞部数を提示して、クライアントを騙しているのである。

しかも、この業務に大手の広告代理店もかかわっていることが最近分かってきた。