全国の新聞発行部数は約15年間で12%減、しかし、販売店の従業員数は26%減の矛盾、背景に「押し紙」隠し?
数字の上で矛盾が生じて、嘘が発覚する滑稽劇がままある。
読者は次に引用する日本新聞協会が公表しているデータを見て奇妙な感じを受けないだろうか。データによると、全国の新聞販売店の従業員数は激減しているが、従業員が配達する新聞の発行部数はあまり減っていない。その背景に「押し紙」が増えている可能性がある。
まず、従業員数は次のように激減している。2001年と2014年を比較してみよう。
【従業員数(総数)】
2001年:46万4827人
2014年:34万4513人
(減少率:26%)
【新聞奨学生】
2001年:1万6333人
2014年:4018人
(減少率:75%)
一方、同じ期間における新聞の発行部数(一般紙)の減数は次のようになっている。
【新聞(朝刊)の発行部数】
2001年:4740万1669部
2014年:4168万7125部
(減少率:12%)
約15年間で、従業員総数が26%も減少しているのに、新聞の発行部数の方は12%しか減っていないのである。
とりわけ配達の「実働部隊」である新聞奨学生の数が75%も減っているのだ。なぜ、これらの数字が奇妙なのだろうか?
ひとりの従業員が配達できる新聞の部数は、個人差があるにしても、ほぼ決まっている。従って従業員数は、新聞の実配部数に見合っていると考えるのが妥当だ。その従業員の数が大幅に減っているということは、実配部数も大幅に減っていることを意味する可能性が高い。
◇バイク数の把握でも「押し紙」の推算は可能
「押し紙」の実態を推測する方法として、従業員数の把握のほかに、配達用のバイク数を把握する方法もある。たとえば10台しかバイクがないのに、1日に4000部の新聞が搬入されている店の場合、1台で配達する部数が200部とすれば、2000部が「押し紙」という推算になる。もちろん正確な数字ではないが、「押し紙」を推測するひとつの目安になる。
日本の新聞人は、この70年間、「押し紙」は1部も存在しないと主張してきた。新聞に対する軽減税率の適用を声だかに主張するのであれば、まず、「押し紙」問題を自己検証すべきだろう。軽減税率には賛成だが、販売店にとっては、「押し紙」をゼロにして、補助金を増やすことが先決なのだ。