1. 毎日新聞, 年間で250億円超の「押し紙」収入の試算、「押し紙」による自作自演の販売収入は粉飾に該当するか?

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2015年07月24日 (金曜日)

毎日新聞, 年間で250億円超の「押し紙」収入の試算、「押し紙」による自作自演の販売収入は粉飾に該当するか?

【サマリー】「押し紙」による販売収入の中身は、実は折込広告の水増し収入と新聞社が販売店へ支給する補助金である。つまり純粋な販売収入ではない。このような性質の収入を販売収入として処理する行為は、粉飾決算に該当しないか?

毎日新聞の「押し紙」144万部から生じるいわくつきの販売収入の額を試算したところ、実に年間で259億円にもなった。新聞社経営に汚点がある事実を公権力が把握したとき、ジャーナリズムは成立しなくなる。日本の新聞社が抱えている「押し紙」問題とは、ジャーナリズムの問題でもあるのだ。

「押し紙」問題を考える際に欠くことができないのは、「押し紙」による収入を経理処理する際に不正が発生する必然性である。つまり、粉飾決算である。「はてなキーワード」によると粉飾決算とは、次のような状況を意味している。

不正に会計を操作することで、収支を偽装した虚偽の決算報告のこと。取引先・株主・銀行などのステークホルダーからの信頼関係の保全を目的とする場合が多い。

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して実際に配達している新聞部数を超えて搬入する過剰な新聞のことである。たとえば2000部の新聞を配達している販売店に対して、3000部の新聞を搬入した場合、差異の1000部が「押し紙」ということになる。この1000部の卸代金は徴収の対象となる。

◇「押し紙」で自作自演の販売収入

「押し紙」による販売収入の中身を検証してみよう。この種の販売収入は、おおむね2つの要素で構成されている。まず、①「押し紙」に連動している折込広告の収入である。それから、②販売店に対して新聞社が支給する補助金である。これは言葉を換えれば、販売店に「押し紙」を買い取ってもらうために新聞社が補助金を支給していることになる。つまり補助金は、いびつな販売収入に変形してブーメランのように新聞社へ戻ってくるのだ。

こうして得た自作自演の販売収入は、厳密な意味では販売収入ではない。そもそも「押し紙」には読者がいないわけだから、販売によって得た収入ではない。しかもこの種の収入には、既に述べたように、新聞社がみずから支出した補助金が含まれているのだ。

こうした性質の「押し紙」の経理処理が法的な観点から見た場合、粉飾に該当するかどうかはさらなる検討を要するが、新聞社が販売収入と称している金額の中に、みずからが販売店に支出した補助金がかなり含まれているのは紛れもない事実である。

新聞人の中には機会があるごとに経営の好調さを自慢している者もいるが、「押し紙」によるいわくつきの販売収入を正規の販売収入と区別しなければ、業績が好調にみえるのはあたりまえだ。

◇「押し紙」収入の試算

毎日新聞を例に「押し紙」収入の試算を示そう。
毎日の「押し紙」は、2004年に外部へ流出した内部資料「朝刊 発証数の推移」により、2002年10月の段階で約144万部だったことが判明している。同資料によると販売店への搬入部数が約395万部だったのに対して、全国の販売店が読者に対して発行した毎日新聞の領収書の枚数(発証)は約251万枚だった。差異の144部が「押し紙」という計算になる。

■「朝刊 発証数の推移」

次の資料は拙著『新聞があぶない』(花伝社)からの抜粋で、毎日新聞の「押し紙」収入を試算したものである。

■「押し紙」144万部による収入試算

結論を言えば年間で259億2000万円の不透明な収入が「押し紙」により生まれた試算になる。これが粉飾に該当するかどうかは、さらなる検証が必要だが、わたしは少なくとも「販売収入」には該当しないと考えている。

新聞社経営に汚点がある事実を公権力が把握したとき、ジャーナリズムは成立しなくなる。日本の新聞社が抱えている「押し紙」問題とは、ジャーナリズムの問題でもあるのだ。この点を避けていくら紙面を批判し、記者を罵倒しても問題の解決にはならない。