1. 自民党・大西英男議員のマスコミ批判が露呈した広告依存型ビジネスモデルの限界と「押し紙」問題

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2015年07月01日 (水曜日)

自民党・大西英男議員のマスコミ批判が露呈した広告依存型ビジネスモデルの限界と「押し紙」問題

6月25日に開かれた自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」で、マスコミをつぶせと言わんばかりの発言が相次いだことが問題になっている。

このうち自民党の大西英男議員は、「マスコミを懲らしめるには、広告料収入をなくせばいい」と発言したが、これは大西議員が現在のメディア企業のどこに決定的な弱点があるかを見抜いていることを物語っている。

広告依存型のビジネスモデル--それは広告収入を主要な財源として、ジャーナリズム活動を展開するスタイルである。現在、「公共放送」を除く、世界の大半のメディア企業が広告依存型のビジネスモデルを採用している。インターネット・メディアも例外ではない。そこでは常に広告主に対する「自粛」が起きている。

しかし、この問題を考える時にややもすると一般論が先行して、盲点になりがちな領域がある。広告という場合、企業が出稿する広告やCMのイメージが強いが、政府や官庁、それに地方公共団体などがメディア企業に出稿する公共広告についても、ジャーナリズム活動にとって負の要素となる側面がある事実である。

公共広告を通じて、想像以上に巨額の金がメディア企業に流れ込んでいるのだ。それが新聞を、「政府広報」に近いものにしている要因のひとつである。

わたしは2012年12月、情報公開請求により、内閣府から2700枚を超える公共広告の請求書(2007年~2010年分)を入手して、朝日、読売、毎日、日経、産経の紙面広告に対して請求された金額を算出したことがある。

◆「押し紙」と広告の関係

その結果、内閣府はこれらの5社に対して、4年間で総額50億円もの広告費を支出していることが分かった。最高額は、読売とその広告代理店に対する約21億円だった。

■参考記事:主要5紙への政府広告費支出、4年間で50億円 最高額は読売とその代理店に対する21億円

しかし、公共広告に対する巨額出費を慣行化させているのは内閣府だけではない。たとえば最高裁事務総局も、メディア企業に対して広告費の大盤振る舞いを続けてきた。

たとえば、2009年4月1日付けで廣告社(株)が最高裁事務総局に対して行った「裁判員制度広報(新聞広告、雑誌広告、インターネット広告等)の企画、制作、広告掲載等実施業務」名目の請求は、総額で5億6227万円にもなっている。たった1回の企画でこれだけの額が動いているのだ。

おもな内訳は次の通りである。

読売:9378万円

朝日:7372万円

毎日:5019万円

■出典:請求書PDF

ちなみに企業広告の価格は、広告主と広告代理店の間で、臨機応変に決定されるので、相場がないのが実態であるが、公共広告の場合は、厳密にABC部数の序列によって価格が決められる。

新聞社が「押し紙」政策により、ABC部数をかさ上げするゆえんにほかならない。政府が「押し紙」問題にメスを入れれば、「押し紙」を柱とした新聞社のビジネスモデルは崩壊する。当然、新聞社の記者も職を失うリスクを背負う。

しかし、新聞社にとって幸いなことに、公共広告の「広告主」は、「押し紙」を放置している。と、いうのも新聞社の弱点を握ることで、メディアコントロールが可能になるからだ。

日本の新聞ジャーナリズムが機能しない原因は、記者の資質以前に、「押し紙」を核とした広告依存型のビジネスモデルにあるようだ。

従って一部の新聞学者のように、いくら新聞紙面を批判しても、新聞ジャーナリズムの再生にはつながらない。「押し紙」という客観的な原因を排除しなければならない。