1. 【「押し紙」70年①】昭和36年にはすでに「押し紙」問題が浮上していた

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2015年06月19日 (金曜日)

【「押し紙」70年①】昭和36年にはすでに「押し紙」問題が浮上していた

ギネスブックに「押し紙」の項目があれば、「押し紙」世界一の認定を受けるのは、間違いなく日本の新聞社である。インターネットや週刊誌が、繰り返し「押し紙」問題を報じても、新聞社の経営陣は「押し紙」は存在しないと繰り返してきた。延々としらを切ってきたのである。

公取委も「押し紙」を取り締まる気がない。政治家は、「押し紙」という新聞社経営の一大汚点を把握し、故意にそれを放置することで恩を売り、新聞社を権力構造の歯車に巻き込んできた。それが自分たちにとってメリットのある世論を形成する手っ取り早い方法であるからだ。

こうした特殊な関係の中で、逆に新聞社の経営陣が政界に大きな影響力を発揮する異常事態が生まれて久しい。首相と新聞人の会食もあたりまえになっている。もちろんジャーナリズムが機能不全に陥っていることは論を待たない。経営上の汚点が招いた日本の悲劇である。

改めて言うまでもなく経営上の汚点とは、「押し紙」のことである。それゆえに「押し紙」問題を無視して、いくら新聞記者を罵倒しても、紙面を批判しても、ジャーナリズムの再生にはつながらない。

読者は「押し紙」制度がいつの時代に始まったかをご存じだろうか。厳密に言えば、昭和5年ごろにはすでに記録があるが、「押し紙」問題が頻繁に浮上するようになったのは、戦後、専売店制度が始まった後である。

◇『日販協月報』に記録された「押し紙」

日本新聞販売協会の会報、『日販協月報』を過去にさかのぼって調べてみると、「押し紙」問題の歴史がよく分かる。

たとえば1961年(昭和36年)6月15日付けの同紙は、第1面のトップ記事で、「押し紙」問題に言及している。次のタイトルである。

ABCの販売店調査

都内を終わり、地方は七月から

記事は、ABC部数の販売店調査の実態を報じたものである。記事の後半では、「Q&A」の形式を取っている。その中に「押し紙」に関する次のような記述がある。

A:(調査員は)どういう質問をしたか?

B:本社からの「押し紙」はないか?、増減率は何パーセントか?、ということをたずねられた。「どの社といわず各社とも五十歩百歩だ。販売店主は『押し紙』に屈することなく自主的に本社と取引すべきだ」と答えた。

また、同じく6月15日付けの第3面には、「寄稿」が掲載され、その中で執筆者が「押し紙」拒否を呼びかけている。次のくだりである。

(略)全国販売店は共同して「押し紙」の代金支払を拒否し例え帳尻に書加えてきても増減通知控を生かして帳尻残金の無効を叫ぶべきである。

「押し紙」問題は50年以上に渡って、未解決のまま放置されている。今世紀に入って、販売店への搬入部数に占める「押し紙」の割合が、販売店によっては50%を超えるなど、尋常ではない実態になっている。

「押し紙」が原因かどうかは別に、このところ販売店主の自殺も相次いでいる。

■日販協月報(出典)PDF       【続】