1. 古くて新しい社会問題-「押し紙」、メディアコントロールの道具に、過去に共産、公明、社会が15回の国会質問

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2015年05月25日 (月曜日)

古くて新しい社会問題-「押し紙」、メディアコントロールの道具に、過去に共産、公明、社会が15回の国会質問

一般的にはほとんど知られていないが、「押し紙」など新聞販売の諸問題が国会で大問題になった時期がある。1980年から1985年の6年間である。この時期に共産党、公明党、社会党が超党派で総計16回に渡って「押し紙」問題などを追及している。

国会図書館には、その時の議事録が残っている。現在は、2015年5月であるから、国会における新聞販売問題の追及が終わって、今年で30年の節目になる。最後の質問は、公明党の木内良明議員によるものだった。1985年4月20日のことである。しかし、「押し紙」問題は、現在も解決していない。

ようやく一部の新聞社が、「押し紙」整理に動きはじめた段階である。

読売の宮本友丘副社長のように、読売は「押し紙」をしたことは一度もないと、法廷で公言した新聞人もいるが、大半の新聞社は、「押し紙」問題をかかえている。販売店によっては、搬入する新聞の50%が「押し紙」になっている例もある。

◆安倍首相と「押し紙」

全販労(販売労働者の労組)の元事務局長・沢田治氏が著した『新聞幻想論』によると、15回の国会質問の日時と内容は次の通りである。

■国会質問一覧

国会質問の内容は、「押し紙」をはじめ、景品を使った新聞拡販、新聞奨学生の酷使、補助金など現在も解決していていない問題で占められていた。沢田治氏によると、新聞はこれらの国会質問を一行も報じなかったという。唯一、国会質問を取り上げたマスコミは、『潮』だった。新井直之・創価大学教授が同誌の連載の中で言及したのである。

新井氏は次のように書いている。

新聞販売の過当競争や、販売店従業員のタコ部屋的状況は周知の事実で、各社は、公取委の批判や全販労の告発に、十分に、誠意をもって答え、対応すべきであろう。新聞が、自ら内部にかかえている矛盾や後進性を克服ぜずして、真の国民のための新聞ということは、決してできない

1985年に国会での新聞販売問題の追及が終わった後、例外的に共産党が数回(山下芳生、吉井英勝)新聞販売問題を取り上げたことがあるが、現在は、議員の間で、この問題に対する意識は希薄になっている。

ただし安倍晋三議員など自民党議員が国会質問の中で、「押し紙」に言及したことはある。おそらく新聞社に対する「牽制球」だろう。その気になれば、いつでも新聞社経営にメスを入れることが出来ることを再認識させたようだ。「押し紙」はメディアコントロールの重要な道具になっている。

古くて新しい社会問題はいまも放置されたままになっている。