1. モラル崩壊の元凶「押し紙」は何故なくならないのか?

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2024年02月08日 (木曜日)

モラル崩壊の元凶「押し紙」は何故なくならないのか?

「押し紙」弁護団から、メディア黒書へ「押し紙」問題を考える上で参考になる2件の準備書面の提供があった。江上武幸弁護士の解説と共に掲載した。裁判資料を公開する意図について、江上弁護士は、『押し紙』裁判が「特定の新聞社に限られた裁判ではないことを読まれる方々に理解してもらうこと」が目的と述べている。準備書面には、新聞の商取引の恐ろしい実態が記録されている。

福岡・佐賀「押し紙」訴訟弁護団 弁護士・江上武幸
2026年(令和6年)2月9日

■「押し紙」裁判準備書面(8)

■「押し紙」裁判準備書面(16)

2011年、東日本大震災を境に急激に発行部数が減少し続ける新聞業界において、今だに販売店からの「押し紙」の相談がたえません。新聞販売店経営に見切りをつけて、次の事業に転身できた方は幸いであり、他方、「押し紙」の仕入代金の支払いにあてるために多額の負債をかかえた方や、帳簿上、借金を新聞社の未納金として処理されてきた方は、生活資金のあてにしていた譲渡代金や保証金を受け取ることも出来ず、自己破産申立をせざるを得ない状況におかれています。

新聞社本体すら経営危機が叫ばれており、新聞社の衰退とともに販売店もなくなることが避けられません。「押し紙」も、いずれその歴史を閉じることになります。

黒薮哲哉さんの最新著作『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社刊)の192頁以下に「付録5 公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、『押し紙』問題に関する交渉文書」が掲載されていますが、肝心の「押し紙禁止規定」の議論の部分はすべて黒塗りにされています。昭和30年に禁止された「押し紙」が、70年後の現在まで何故続いているのか、その秘密が黒塗り部分に隠されていると思います。さらなる情報開示が必要です。

「押し紙」問題は、我が国の言論・表現・報道の自由、ひいては民主主義の根幹にふれる問題であり、今後、多方面からのより詳細な調査・研究が望まれます。

名古屋大学教授の林秀弥先生や鹿児島大学準教授の宮下正昭先生などジャーナリズム研究の諸先生方、および元毎日新聞社常務取締役の河内孝氏、さらに公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引課長(平成11年当時)であった山本康孝氏ら、これまで「押し紙」問題の解決のためにご尽力されてきた方々の一層のご活躍を願う次第です。

なお、今回は、ブロック紙を相手方とする2件の「押し紙」裁判の準備書面を資料として添付します。

公正取引委員会の勧告を受けた北國新聞社、名古屋高裁判決の相手方新聞社、それに「押し紙」問題を自主解決した熊本日々新聞社と新潟日報社を除けば、他の新聞社名と原告名は●●で隠しています。

この公表は、「押し紙」が我が国の新聞業界が抱える普遍的な共通性を有する問題であることから、「押し紙」裁判も特定の新聞社に限られた裁判ではないことを読まれる方々に理解してもらうことを意図したものです。

また、「押し紙」訴訟の提訴を検討されている弁護士の方々には、引用した証拠の写しの提供が可能と考えますので御連絡(☏0942-30-3275)ください。

最後に、熊本日々新聞社・新潟日報社以外に「押し紙」問題を解決した新聞社があれば御連絡戴ければ幸いです。「押し紙」問題は後世に伝えるべき現代史の重要な一局面ですので、可能な限り正確な歴史を残すために御協力をお願いします。
以上