日本新聞協会と文部科学省の親密な関係、売れない新聞を学校の教育現場へ(1)
読者は、NIE(教育の中に新聞を)運動をご存じだろうか?
これは学校教育の中で、新聞を教材として使うことがを推奨する運動である。日本新聞協会が主導して、文部科学省の支援を受け、全国規模で進めている運動だ。新聞ばなれが急激に進む中で、新聞関係者は生き残りをかけてNIEに熱を上げているのである。いわば新聞販売活動でもある。
この運動により日本新聞協会は、2020年度からはじまった新しい学習指導要領に、新聞を学校教育の教材として取り扱う方向性を明文化させることに成功した。
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新学習指導要領は、小学校から高校まで、新聞を読むことの重要性を強調している。たとえば小学校5年生の社会科で身に着ける知識として新学習指導要領は、「放送、新聞などの産業は、国民生活に大きな影響を及ぼしていることを理解すること」や、「聞き取り調査をしたり映像や新聞などの各種資料を調べたりして、まとめること」を義務付けている。
中学校の学習指導要領になると、新聞・テレビを偏重する傾向は一段と露骨になる。「社会生活の中から話題を決めるときは、地域社会の中で見聞きしたことや、テレビや新聞などの様々な媒体を通じて伝えられることなどの中から話題をきめる」とか、なにか行事があるときは「新聞やテレビなどから得られた資料を紹介するなどして生徒の関心を呼び起こし、地域で行われる活動に生徒が参画したり、教室に招いて専門家の話を聞いたりするなどの学習活動が考えられる」などと明記している。
さらに高校になると、「日常的な話題について、新聞記事や広告などから必要な情報を読み取り、文章の展開や書き手の意図を把握する」と述べるなど、新聞を手本にして作文の技術を習得させることまで明文化しているのだ。
はたして慣用句を散りばめた新聞の文章が日本語の書き言葉として最高水準なのか、はなはだ疑問があるが、そんなことはおかまいなしに新聞関係者は新学習指導要領に新聞・テレビの重要性を明記させたのである。児童・生徒にとっては迷惑な話である。もとっと質の高い日本語に接したほうがいい。
新聞業界と文部科学省の癒着は露骨になっている。それにつれて紙面からジャーナリズム性は薄れていく。故意に報道されない情報が増えていく。
こうした新聞社と公権力の構図を打破しない限り、日本の新聞ジャーナリズムの再生はあり得ない。
児童・生徒に対して、新聞の「押し紙」をどう説明するのだろうか。【続く】