1. 西日本新聞の「押し紙」裁判、裁判官が「和解に応じることはありますか」、4月と10月に過重な「押し紙」、その背景に広告営業の戦略

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2021年09月18日 (土曜日)

西日本新聞の「押し紙」裁判、裁判官が「和解に応じることはありますか」、4月と10月に過重な「押し紙」、その背景に広告営業の戦略

西日本新聞の元販売店主・下條松治郎さんが起こした「押し紙」裁判の第1回口頭弁論が、9月16日に福岡地裁で開かれた。被告の西日本新聞社は、擬制陳述を行った。

※擬制陳述:第1回の口頭弁論に限って、答弁書の提出を条件に、被告の出廷が免除される制度

出廷した原告弁護団によると、裁判長は原告の主張を確認した後、和解に関する弁護団の方針について意思を確認したという。

「裁判官から和解に応じることはありますかと聞かれ、ハイと答えたところ、『和解が有りなら裁判の体制が単独になるかも知れません、もちろん合議制になるかも知れませんが』と言われました」

第1回口頭弁論で、裁判官が和解に関する当事者の考えを確認するのは異例だ。その背景に、司法関係者が「押し紙」問題の本質を理解しはじめた事情があるのかも知れない。

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今年の7月27日、長崎県で西日本新聞の販売店を経営していた下條さんは、「押し紙」で損害を受けたとして、西日本新聞社に対し約3050万円の支払いを求める裁判を起こした。原告代理人は、江上武幸弁護士ら、「『押し紙』弁護団」が担当している。

この裁判の重要な争点のひとつに、「4・10増減」(よんじゅう・ぞうげん)と呼ばれる新聞社の販売政策がある。「4」は4月のABC部数を、「10」は10月のABC部数を意味する。
新聞社は、4月と10月に「押し紙」を増やすことによりABC部数をかさあげする。と、いうのも4月と10月のABC部数が、紙面広告の媒体価値を評価する祭のデータになるからだ。また、折込広告の営業の際に、広告主に提示する折込定数(適正な折込広告の枚数)の基礎データとなるからだ。

4月のABC部数は、6月から11月までの広告営業に使われる。また、10月のABC部数は、12月から翌年5月までの広告営業に使われる。広告主にとっては、悪質な「騙しの手口」であるが、多くの新聞社が販売政策として採用してきた。公正取引委員会や警察も、それを放置してきた。

下條さんが起こした「押し紙」裁判では、この「4・10増減」がはじめて法廷で審理される。

【参考資料】

■訴訟

■「押し紙」一覧

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なお、4・10増減は、かつてはあたりまえに行われていた。次に示すのは、2004年から2008年のデータである。調査対象の新聞社は、朝日、読売、毎日、産経の4社である。グレーの部分で4・10増減が確認できる。