ABC部数のロックの実態、「積み紙」の責任も新聞社に、残紙問題の最大の被害者は広告主
日本ABC協会が、公表している新聞のABC部数は、実配部数を反映していないのではないかという疑問が、メディア黒書に寄せられている。特定地域のABC部数が、長年に渡ってロック(部数の増減がゼロの状態)されている事実が調査で判明したことが、疑惑を呼んでいる原因のひとつである。かねてから疑惑はあったが、具体的な数字で、それが明らかになってきた成果である。
こうした状況の下で、筆者は古い『読売ファイル』から、読売新聞社の興味深い主張を発見した。それを紹介する前に、まず、ABC部数ロックの例を示しておこう。
なお、部数ロックの問題は、読売新聞社だけに限定した問題ではない。新聞業界全体の問題である。
《朝日新聞・東京都武蔵村山市》
2016年4月 :4975部
2016年6月 :4975部
2017年4月 :4975部
2017年10月 :4975部
2018年4月 :4975部
2018年10月 :4975部
2019年4月 :4975部
2019年10月 :4975部
2020年4月 :4975部
《朝日新聞・名古屋市中区》
2016年4月 :7322部
2016年6月 :7322部
2017年4月 :7322部
2017年10月 :7322部
2018年4月 :7322部
2018年10月 :7322部
2019年4月 :7322部
2019年10月 :7322部
《読売新聞・和歌山県御坊市》
2016年4月 :3965部
2016年6月 :3965部
2017年4月 :3965部
2017年10月 :3965部
2018年4月 :3965部
2018年10月 :3965部
2019年4月 :3965部
2019年10月 :3965部
2020年4月 :3965部
《読売新聞・広島県府中市》
2016年4月 :5679部
2016年6月 :5679部
2017年4月 :5679部
2017年10月 :5679部
2018年4月 :5679部
2018年10月 :5679部
2019年4月 :5679部
2019年10月 :5679部
2020年4月 :5679部
2020年10月 :5679部
全国の各地で同じ現象が確認できる。
【参考資料】名古屋市全域における朝日新聞のABC部数、ロックの実態
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わたしが所有する自称『読売ファイル』の中に対新潮社・黒薮裁判の中で、読売が提出した陳述書がある。その中のひとつに宮本友丘専務(当時)が執筆したものがある。(2010年8月31日付け)。宮本氏は、ABC部数について、次のように述べている。
読売新聞社は2年に一度、社団法人日本ABC協会(以下「ABC協会」といいます)から、部数について公査を受けています。ABC協会は、日本で唯一、新聞の部数を公正に調査、認証する機関です。国内において、第三者の立場から客観的に新聞部数を調べる組織は、ABC協会をおいて他には存在しません。被告新潮社らは、ABC協会の公査は信用性がないと主張していますが、それならば広告主は一体どこに部数の確認を求めれば良いのでしょうか。
また、東京都文京区のYC店主は、陳述書(2010年8月8日)の中で、次のように述べている。
私は新聞販売経営に携わって40年近くになりますが、注文しば部数を超える新聞が読売新聞社から送られてきたことはただの一度もありませんし、読売新聞社から部数を押し付けられたこともありません。
これら2件の陳述書は、ABC部数がいかに正確な数字であるかを認めているのである。
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こうした主張に対して、わたしは自分なりの反論があるが、それを控えるとしても、少なくとも残紙が存在することは間違いない。前出の宮本専務も、陳述書の中で次のように述べている。
残念なことではありますが、新聞販売店が実際の部数をごまかし、水増しした部数を注文するケースはまれにあることも事実です。これは、新聞社が指示したり、押し付けたりしたわけではなく、販売店自らの意思で注文する行為であって、「押し紙」ではなく、「積み紙」と呼ばれています。
日本新聞協会もまったく同じ見解である。
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しかし、残紙の中身が「押し紙」であろうが、「積み紙」であろうが、残紙が広告主に損害を与えていることは紛れない事実である。特に地方自治体の広報紙は、大きな損害を受けている。広告主は、残紙そのものを問題視しているのである。
この問題は、今に始まったことではない。少なくとも40年前から問題になっているのである。新聞社は、その実態を知っている。
と、すれば新聞社に残紙の責任があるのではないか。「積み紙」だから自分たちは関係がないでは、済ませられないのである。