2021年04月23日 (金曜日)
連載・「押し紙」問題⑤、4月と10月に新聞のABC部数が水増しされる理由、広告営業を優位に展開するための不正な戦略
読者は、「4・10増減」(よん・じゅう・増減)という言葉をご存じだろうか。新聞販売店主の間では、周知になっている用語で、「4」は4月のABC部数を、「10」は10月のABC部数を示す。
4月と10月に新聞のABC部数が増えて、月が替わるとまたABC部数が減部数されるパターンのことである。逆説的に言えば、4月と10月に新聞社は、広義の「押し紙」を増やし、それが過ぎると再び部数を減らすというのだ。つまり販売店にとっては、年に2回、「押し紙」の負担が増す。
なぜ、新聞社はこのような政策をとるのだろうか。
答えは簡単で、4月と10月のABC部数が広告営業(紙面広告と折込広告)のための基礎データになるからだ。4月のABC部数データは、6月から11月の期間に使われ、10月のABC部数は、12月から翌年の5月の期間に使われる。そこで4月と10月のABC部数をかさ上げしよという目論みらしい。
新聞離れが顕著になっている最近では、「4・10増減」は観察されないが、2000年代には商慣行になっていたケースもある。下表、黄色で示した部分の部数を柱にして、前月と後月の数字を比べてみてほしい。いずれも黄色の部分が凸状態になっている。