南日本新聞の販売店5店が「押し紙」の集団訴訟、『週刊金曜日』が報じる
『週刊金曜日』(8月30日)が、地方紙の「押し紙」問題を取り上げている。クローズアップされている新聞社は、南日本新聞、宮崎日日新聞、それに佐賀新聞である。また、「押し紙」制度を廃止した例として、熊本日日新聞の取り組みが紹介されている。
このうち筆者の興味を引いたのは、南日本新聞のケースである。5つの新聞販売店が「押し紙」を断ったにもかかわらず、同社は「押し紙」を販売店へ搬入したという。その部数は、合計で1日に約850部。5店はこの「押し紙」を「返却」することにして、南日本新聞の警備室の脇に積み上げた。
5店は現在、注文部数を超えて搬入する「押し紙」については、代金の支払い義務がないことを確認(債務不存在)する裁判を起こしている。
ちなみに新聞販売店による集団訴訟は、過去に北國新聞や琉球新報などで起こされている。いずれも販売店の和解勝訴である。また、この記事の執筆者は、鹿児島大学の宮下正昭准教授である。研究者が「押し紙」問題に取り組むのはまれだ。
◆ 「実配部数+予備紙」=注文部数
「押し紙」問題で常に議論になるのは、新聞の商取引における「注文部数」の定義である。一般的に注文部数とは、商店が卸問屋に注文する商品の数量のことである。たとえば書籍を100冊注文すれば、100冊が注文部数である。
ところが新聞業における「注文部数」の定義は、一般商品の取引における「注文品数」とは異なる。新聞業で意味する「注文部数」とは、業務上で必要な部数に予備紙を加えたものである。言葉を換えると、
「実配部数+予備紙」=注文部数
と、なる。
従って注文部数を超えて搬入された新聞部数は、理由のいかんを問わず、すべて「押し紙」 である。機械的に「押し紙」と見なすのが、新聞特殊指定の解釈である。
こうした理論に対抗して新聞社が主張してきたのは、「残紙はすべて予備紙」という詭弁である。その結果、「わが社に限って、これまで1度も『押し紙』をしたことがない」と胸を張って公言する輩も現れる。
しかし、残紙には「予備紙」としての実態がないわけだから、こうした論理は成り立たない。