ABC部数はこうして改ざんされる、改ざん作業を行ったデュプロの社員が語った恐るべき手口、全録音記録を公開
新聞のABC部数が、実配部数を反映していなことは、かなり前から新聞販売店主らの証言で明らかになっていた。ABC公査の直前に、販売店が保管している帳簿類(現在は、PC上のデータ)の改ざんが行われるというのだ。ただ、改ざんの現場を撮影するとか、改ざんした当事者が具体的な手口を明かすことはなかった。その結果、改ざん作業は、断罪されることなく新聞業界の慣行と化した。罪悪感もなくなったようだ。
が、筆者はこの10月、帳簿類(PC上のデータ)の偽装にかかわった人物が、その手口を語った録音テープを入手した(上のyoutube)。手口を録音したのは、兵庫県の西宮市で毎日新聞販売店を経営していた板見英樹さんである。(現在は廃業)
発端は、2016年9月に神戸市東灘区にある2件の毎日新聞販売店にABC公査が入ったことである。その前日、毎日新聞販売店のコンピュータを管理しているデュプロ(株)の毛塚という社員が、板見さんの店に現れ、領収書の剪断機(せんだんき)を借りにきた。
なに使うのかを問うたところ、ABC公査に先だってPC上のデータを改ざんするのだという。興味を引かれた板見氏は、翌日の改ざん作業が終わったあと、改ざん作業を行ったデュプロの坂田という社員を自店に呼び出し、改ざんの一部終始を聞き出した。
口実は、次は自分の販売店にABC公査が入る可能性があるので、事前に改ざんの手口を教えてほしいというものだった。
坂田氏が語った改ざんの手口は、次のようなものだ。
【1】「過去読を起こす」
「過去読」とは、過去に毎日新聞の購読歴がある人のことである。PC上の発証台帳(一種の購読者一覧)には、「現読」はいうまでもなく、過去の読者の名前や住所などが保存されている。
その「過去読」を「現読」に変更するのだ。
「まあいえば、現在(新聞が)入っていないお客さんでも、入っているようにして、それでデータを全部作ってしまう?」(坂見)
「うん」(坂田)
【2】領収書の発行
「過去読」を「現読」に改ざんしたあと、領収書を発行する。新聞業界ではこの作業を「証券を発証する」という。
「証券を発証」した後は、剪断機(せんだんき)を使って、ニセの領収書にミシン線を入れる。
【3】領収書のバーコードを読みとる
ミシン線が入った領収書が完成すると、「読者分」を切り離して処分する。次に「店控え」分にあるバーコードを読み込む。するとそのテータが発証台帳に自動的に反映される。これがABC公査の際に提示されるデータになる。
◆他の新聞社でも同じことが
興味深いことに、この改ざん作業には、毎日新聞社販売局の社員が立ち会う。東灘区のケースでは、「川口」、「山本」の2名が立ち会った。
「たとえば今回、吉岡(住吉販売所の所長)のところへ川口(デスク)がいってますやんか」(板見)
「へえ」(坂田)
「それを坂田さんらがばーとデータとるときも、川口もそこにおるんですか?」(板見)
「いてます」(坂田)
「立ち会い?」(板見の妻)
「立ち会いで」(坂田)
「立ち会いをしとんですか?」(板見)
「はい」(坂田)
同じ手口の改ざん作業を、神戸新聞、産経新聞、朝日新聞でも実施していると、デュプロの坂田氏は述べている。
「9月の1週に朝日さん、2週に神戸さん、3週に毎日さん、4週に産経さん、そんなふうに割り当てて。読売さんは抜けていますが、そういうかたちで、2年に1回、9月前後にやっています」(坂田)
各社のコメントは次の通りである。
【神戸新聞】(口頭で回答しないとのコメントがあった。)
【朝日新聞】「具体的な指摘でなく、根拠も不明なご質問には、お答えしかねます。」
【産経新聞】「取引先販売店の業務に関する事案であり、コメントする立場にありません」
◆作業日は有給を取る
さらに作業日には、デュプロの社員が有給を取り、社員が「個人」の立場で改ざん作業を行ったというアリバイを作るのだという。
かりにニューヨークタイムズやワシントンポストで同じ問題が発覚すれば、輪転機が止まる可能性が高いが、日本では何の問題にもならない。