崩壊へ向かう新聞販売網、新たな問題が浮上、「店主を辞めさせてもらえない」
新聞販売店の経営が悪化して、自主廃業する店主が増えている。ここに来て、かつては想像もできなかった新しい問題が発生している。横浜市内の店主が言う。
「廃業を申し出たところ、廃業しないように泣きつかれました。変な話でしょう。契約に従って手続きを踏めば廃業できるはずですが、もう少しだけ続けててくれと言うのです」
販売店の後継者を探すのが難しい状況が生まれているのだ。前任者から店を引き継いでも、最初から「押し紙」付きの引き継になることを、業界関係者は経験則から知っている。開業してまもなく破産に追い込まれた「先輩」の例が業界中に知れ渡っているから、店主のなり手がいないのだ。
それに新聞の将来についての見通しも、後継者がいない原因だ。都内の毎日新聞の元店主が、販売網の余命についていう。
「もう数年で崩壊すると思います。来年かも知れません」
販売店主が強引に辞職した場合、新聞社は店主が不在になった店を本社直営にするか、販売店を閉鎖して、他紙の販売店に配達を依頼するかの選択に迫られる。あるいは、新店主がみつかるまで、暫定的に本社が店舗を管理する。
かつては販売店主を公募して採用者が研修を受け、店主になるケースがあった。しかし、こうした人々の多くはやはり「押し紙」で廃業に追い込まれた。脱サラして店主になったが、騙されたと感じている人が少なからずいる。
今後、「押し紙」による損害賠償問題が次々と起きてくるのではないか。裁判は証拠の有無によって勝敗が決まるので、販売店は全書類を整理・保存しておくべきだろう。「押し売り」の証拠があれば、勝訴できる時代になっている。
2007年の真村裁判の福岡高裁判決よりも前の時代は、販売店に勝ち目はなかった。だが、今は状況が変わっている。販売店の方が有利になりはじめている。
改めて言うまでもなく、店主の廃業を妨害するのはパワハラだ。これについても証拠を残しておくべきだろう。