1. 真村裁判の福岡高裁判決から11年、新聞販売網の整理・統合が本格化、改めて「押し紙」問題を問う

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2018年09月20日 (木曜日)

真村裁判の福岡高裁判決から11年、新聞販売網の整理・統合が本格化、改めて「押し紙」問題を問う

このところ筆者のもとへ新聞販売店の廃業に関する情報が数多く寄せられている。昨日(19日)も、一通の匿名メールーを受け取った。次のような内容である。

東京都町田市のXX新聞の店、同時に3店やめました。

まだ裏付けは取っていないが、最近の情勢から判断して、特に驚く情報ではない。筆者は、ここ1年ぐらいの間に、新聞販売網の整理統合が急速に進むと予測している。

 

◇真村裁判・福岡高裁判決の意味

新聞の衰退がメディアで本格的に報じられるようになったのは、2007年の秋からだ。雑誌が、次々と「新聞没落」、あるいはそれとよく似た題の特集を組み始めた。筆者がなんらかのかたちでかかわったものだけでも、次のような特集がある。

「新聞没落」(週刊ダイヤモンド)2007年9月22日号
「新聞の余命」(SAPIO)2007年11月
「ジャーナリズム大崩壊」(SAPIO)2008年11月
「新聞・放送に未来はあるのか」(マスコミ市民)2009年10月 

 その他にも、「週刊東洋経済」がこの種の特集を組んだ。週刊誌も断続的に「押し紙」を取りあげている。

しかし、2009年7月に『週刊新潮』の「押し紙」報道に対して、読売が名誉毀損裁判を起こしたのを機に、「押し紙」報道は萎えていった。この裁判では、筆者も被告だった。筆者はこの裁判の他に、読売から2件の裁判を起こされ、総計で約8000万円を請求された。

読売の主張は、「押し紙」は1部も存在しないというものだった。これが真実であると、読売代理人の喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)らが、法廷で主張したのである。

たとえば週刊新潮の裁判で、読売の宮本友丘専務は、喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言した。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

◇筆者の主張は、「押し紙」は存在する

一方、筆者の主張は読売にも「押し紙」が存在するというものだった。

判決は読売の勝ちだった。しかし、筆者は、判決は間違いだと今も確信している。これから販売網の崩壊がはじまるわけだが、筆者としてもこの時期に改めて、過去の「押し紙」問題を検証していきたい。

2007年に「新聞没落」の特集が始まって11年。多くの読者が、「新聞社はしぶとく、没落は始まらないではないか」と感じていたのではないかと思う。しかし、いま本当に始まっている。

 

◇渡邉と喜田村の重い責任

2007年に「新聞没落」の報道が始まった引き金は、読売・真村裁判の福岡高裁判決である。

真村裁判の福岡高裁判決

この裁判は、「押し紙」裁判ではなく、販売店の地位保全の裁判だったが、その中で読売の「押し紙」政策が認定されたのである。ABC部数の水増しの手口も、判決の中で認定されている。

読売の「押し紙」が認定された事実を、筆者が『月刊HANADA』で指摘したところ、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送付してきた。

次に紹介するのは、滝鼻氏に対する筆者の反論だ。抗議文を読んでいない人にも、理解できるように構成している。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

福岡高裁判決の判例があるからこそ、その後、徐々に「押し紙」にメスが入ったのである。数々の裁判を起こしてきた渡邉恒雄氏と喜田村弁護士は、今後、「押し紙」と関連がある過去の数々の訴訟について、説明責任を果たす必要があるだろう。裁判で数多くの人々を傷つけている。

新聞崩壊を前に、彼らが販売店に対してやったことを記録として残す必要がある。物事の終わりは、始まりでもある。情報を求む。

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