2018年09月13日 (木曜日)
学習指導要領で新聞を活用する教育方針を明記、児童や生徒に新聞の「押し紙」による組織的な詐欺や環境破壊をどう説明するのか?
文科省が7月に発表した「高等学校学習指導要領」の解説で、教材として新聞の活用が推奨されていることを読者はご存じだろうか。「総則編」の中に7箇所も、新聞の活用が明記されている。たとえば次の箇所である。
各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
日販協(日本新聞販売協会)の『日販協月報』(4月)によると、新聞を活用する教育方針は、高校だけではなく、小中学校でも導入される見込みだという。
小中学校の次期指導要領改訂案でも、新聞を活用する方針が盛り込まれ、国語では小学5年、6年で複数の本や新聞を用いることを明記。中学2年は新聞などで情報を集め、中学3年で論説や報道を読み比べするように求めている。
◆3つの問題点
新聞関係者は教育の中に新聞を持ち込む運動を展開してきた。しかし、いくつかの根本的な問題がある。
①新聞を通じて得る情報の大半が記者クラブを経由している事実。
新聞の情報は、記者クラブを発信源とする情報で基本的には記者が自分で取材した情報ではない。当然、情報の提供者にとって不都合な情報は隠してある。
事実を正確に伝えていない場合がままある。
新聞が何を報じていないのか、あるいはどのような情報を隠しているのかを検証するために、新聞を活用するのであればまだしも、新聞の情報は信頼するに値するという前提で、新聞を教材として使うことには問題があるだろう。
②「押し紙」問題を解決しようとしない問題企業の商品を教育の現場に持ち込む愚。
「押し紙」は、独禁法で禁止された違法行為である。また、「押し紙」と表裏関係にある折込広告の水増し行為は、刑法上の詐欺に該当する。さらに地球の温暖化が急速に進む状況下で、「押し紙」は環境問題でもある。紙を製造するために、日々、森林が失われている。
児童や生徒から、これらの諸問題を指摘された場合、情報の信憑性について質問されたら、教師は答えようがないのではないか。
③政府による新聞の保護
さらに学校教育の中に新聞を取り入れることにより、政府が新聞社経営をサポートする構図が生まれる。本来、ジャーナリズムと公権力は共存すべきものではない。ジャーナリズムの使命である権力批判ができなくなるからだ。
教育現場での新聞の使用がエスカレートすれば、新聞はますます世論誘導の道具としての負の性格を強めていくだろう。
【動画】水増しされた折込広告の搬出風景。段ボールの中に廃棄される折込広告が入っている。