1. 中央紙のABC部数、10年間で577万部減、東京新聞社10社が消えたに相当、朝日の一連のスクープと「押し紙」問題の関係

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2018年04月12日 (木曜日)

中央紙のABC部数、10年間で577万部減、東京新聞社10社が消えたに相当、朝日の一連のスクープと「押し紙」問題の関係

2008年2月から2018年2月までの期間における中央紙のABC部数の変遷を紹介しよう。この10年間で、朝日は約200万部、毎日は約100万部、読売は約150万部、日経は約60万部、産経は67万部を減らしたことになる。中央紙全体でおおむね577万部が消えた計算になる。

この577万部という数字がいかに大きなものであるか、読者は想像できるだろうか?2018年2月度の東京新聞のABC部数が約57万8000部であるから、東京新聞社がほぼ10社なくなったことになる。

詳細は次の通りである。

   2018年  (2008年)
朝日:5,989,345 (8,016,119)
毎日:2,840,338 (3,879,114)
読売:8,560,861 (10,015,054)
日経:2,445,373 (3,045,189)
産経:1,516,574 (2,187,795)

次のデータは、2008年2月のABC部数と2018年のABC部数の差異である。いずれもマイナスだ。

朝日:2,026,774
毎日:1,038,776
読売:1,454,193
日経: 599,816
産経 :671,221

裏付け①2018年のABC部数

裏付け②2008年のABC部数

改めて言うまでもなく、消えた新聞の多くは「押し紙」である。

◇新聞社経営の柱--「押し紙」

「押し紙」の存在は、日本新聞販売協会の資料によると、厳密に言えば戦前から確認されている。戦後、専売店制度が導入されてから急激に増え、1997年には、同協会が販売店を対象に、残紙(押し紙)のアンケート調査を実施している。この調査で販売店に搬入される新聞の8.3%(全国平均)が「押し紙」になっていることが分かった。1980年代には、国会で「押し紙」問題が取りあげられた。その後、週刊誌や月刊紙が断続的にこの問題を取りあげた。

そして2007年には、読売とYC(読売新聞販売店)の間で争われた裁判で、読売の「押し紙」を認定する判決が下った。有名な真村訴訟の福岡高裁判決である。

福岡高裁判決

「押し紙」の存在は、新聞業界の内部では公然の事実である。

◇メディア対策としての軽減税率 

しかし、公正取引委員会は、1996年の北國新聞の例を除いて、独禁法違反を理由に「押し紙」を取り締まる策には出なかった。その理由は実に簡単で、「押し紙」を放置することで、新聞社の経営上の大汚点を見逃し、暗黙のうちにメディアをコントロールすることが、権力者にとってのメディア対策であるからだ。

事実、政府よりの新聞ほど「押し紙」が多い傾向がある。もちろん例外はあるが。

ちなみに、新聞に対する消費税の軽減税率を適用する策も、実はメディア対策である。「押し紙」は、帳簿上では読者がいる普通の新聞なので、当然、消費税を課税する対象になる。購読料が徴収できない「押し紙」に消費税が課せられるのだから、新聞社と販売店にとっては、大変な負担になる。逆説的にいえば、それゆえに新聞に対する軽減税率策はメディア対策として作用するのだ。

ところが「押し紙」を排除した新聞社には、消費税の軽減税率適用によるメディア対策はほとんど通用しない。

朝日の報道がよくなってきた背景には、「押し紙」政策の廃止がある。それにより公権力に付け込まれるスキがなくなってきたのだ。