新聞販売網再編の前夜、新聞社が「押し紙」を排除しはじめた本当の理由
このところ顕著になっているのが、新聞のABC部数の減部数である。坂道を転げ落ちるように、新聞の公称部数が下降線をたどっている。しかし、新聞部数の激減を単純に読者離れと解釈することはできない。結論を先に言えば、読者数は微減で、激減しているのは「押し紙」である。
ABC部数の中には多量の「押し紙」が含まれているので、ABC部数の減少が読者数の減少と錯覚してしまうのだ。
下記、青の数字は2017年11月のABC部数で、()内の赤の数字は10年前、つまり2007年11月のABC部数である。
朝日 6,136,337(8,010,922)
毎日 2,942,247(3,882,063)
読売 8,713,985(9,983,032)
日経 2,702,584(2,882,495)
産経 1,519,645(2,167,187)
この10年間で、朝日新聞は約187万部、読売新聞は約127万部、毎日新聞は約94万部の減部数となった。
◇ビジネスモデルの崩壊
新聞社がみずから「押し紙」を減らしはじめた背景には、2つの要因があるようだ。まず、ひとつは新聞販売店の経営が悪化していることである。「押し紙」は、帳簿上では、実配部数として計上され、消費税の課税対象にもなるので、「押し紙」が多いと新聞販売店の経営が圧迫される。
折込広告の需要が多かった時代は、いくら「押し紙」があっても、「押し紙」に折込広告がセットになっているので、大きな損害を受けることはなかった。ときには「押し紙」で生じる損害を、折込広告の収入で相殺し、さらにそれ以上の収益を得ることもあった。
しかし、折込広告の需要が減ると、「押し紙」による損害を折込広告の収入で相殺する従来のビジネスモデルが成り立たなくなった。
新聞社は、販売店の経営を維持し、新聞配達網を守るためには、「押し紙」を減らさざるを得なくなったのだ。
◇障害になりはじめた再販制度とテリトリー制
新聞社が「押し紙」を排除せざるを得なくなったもうひとつの理由として、販売網の再編に迫られている事情がある。新聞の読者数は、将来的には確実に下降線をたどる。そうすると「押し紙」を減らしても、経営が困難になる。
そこで浮上してくる対策が販売網の再編成である。ひとつの販売店が全紙を配達する制度、つまり合売店制度への切り換えだ。当然、「押し紙」を抱えたままの合売店への移行は難しい。「押し紙」を整理した上での再編成が前提となるのだ。
ただ、再編により、淘汰される販売店もでてくることも付け加えておかなければならない。読売と朝日が全紙を配達する制度になるのではないかとの見方もあるが、現時点ではなんとも言えない。
こうした状況の下で、再販制度に伴うテリトリー制も、邪魔になってきたというのが、新聞関係者の本音のようだ。
今後、新聞販売店と新聞社の間のトラブルは、ますます増えるだろう。その時に、泣き寝入りするのではなく、早めに弁護士に相談するのが賢明だ。最近、和解で新聞社が側が3000万円近い賠償金を支払わされたケースもある。新聞販売問題の相談は、メディア黒書はいうまでもなく、「ノー残紙キャンペーン」でも受け付けている。