1. 新聞の購読世帯は全体の4割程度か? 欠点だらけの新聞協会のデータ、「押し紙」ゼロを前提に計算

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2018年02月15日 (木曜日)

新聞の購読世帯は全体の4割程度か? 欠点だらけの新聞協会のデータ、「押し紙」ゼロを前提に計算

日本新聞協会が公表している「新聞の発行部数と世帯数の推移」と題する資料によると、2017年10月の段階で、1世帯あたりの新聞購読部数は、0.75部となっている。2000年の段階では、1.13部であったから、この17年間で大きく落ち込んだことになる。

一方、世帯数は2000年の約4700万世帯から、約5600万へと大幅に増えている。世帯数が増えたことが、1世帯当たりの平均購読部数を減らしたという解釈もできるが、新聞購読者が減っている事実は動かない。

次に示すのは、2000年から2017年までの「新聞の発行部数と世帯数の推移」である。

「新聞の発行部数と世帯数の推移」

読者は、1世帯あたり平均して0.75部の新聞を購読しているとする新聞協会のデータを信用できるだろうか。おそらく実感として、「おかしい」と感じている人が多いのではないか。マンションやアパートの郵便受けには、まばらにしか新聞が投函されていないからだ。

新聞協会のデータの問題点は、新聞の発行部数に「押し紙」(協会は、「積み紙」と言っている)を含んだ部数を採用していることである。データのタイトルに「発行部数」とあるから、新聞の実配部数のデータを基礎にした計算ではないことは、新聞協会も認めているが、「押し紙」が何であるかを知らない人は、「発行部数=実配部数」と受け止める。

◇「押し紙」排除を最優先に

かりに新聞の発行部数の3割が「押し紙」とすれば、新聞の実配部数は2017年の時点で、29,489,732部ということになる。これを1世帯あたりの部数にすると、0.52部。こちらの方が実態により近い。

しかし、この数字にはスポーツ紙が約336万部とコンビニなどで販売される若干の部数が含まれているので、実際に一般紙を購読している世帯は、さらに少ないと推測される。また、1世帯で複数の一般紙を購読しているケースもある。たとえば朝日と日経というように。

ちなみにスポーツ紙は、「サービス品」として無料で配達されているケースがままある。

世帯数の根拠について言えば、新聞協会のデータには、企業や役所は、新聞を多量に購入しているにもかかわらず、世帯数には含まれていない。(世帯数の裏付けは、住民基本台帳)

また、かりに「押し紙」率が30%を超えていれば、1世帯あたりの購読部数はさらに低くなる。

こうした状況を考慮すると、実際に新聞を購読している世帯は、全体の4割程度ではないかと筆者は推測する。

本来、4割の世帯が新聞を購読していれば、新聞販売店の経営は成り立つ可能性もある。絶対に不可能というわけではない。しかし、「押し紙」があるので経営が破綻する販売店が増えている。「押し紙」を排除して、補助金を増やせば、販売網は当面のあいだは維持できる。補助金を増やすことが絶対に不可欠であるが。しかし、一部の新聞社を除いて、社員の待遇を維持することを最優先して、必要な販売政策を取っていないようだ。

 

◆「押し紙」と折込広告の回収場面画の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決