1. 新聞配達網が危機的状況、販売店主が配達・集金、月収5万円、新しい同業組合の結成を早急に

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2017年12月25日 (月曜日)

新聞配達網が危機的状況、販売店主が配達・集金、月収5万円、新しい同業組合の結成を早急に

そろそろ新聞社の倒産もありうるのではないかという予感がする。すでに経営が破綻している販売店が急増しているからだ。新聞社の系統によっては、搬入される新聞の半分近くが「押し紙」になっている店も少なくない。

わたしが初めて「押し紙」5割の情報を得たのは、確か2002年だったから、それから15年ほどが経過している。15年前は、ガセネタだと思って、取材しなかった。その後、「押し紙」が4割にも5割にもなっている実態を、現場で次々と確認して認識を改めたのである。

最近は、「押し紙」が5割になっていると聞いても驚かない。

ABC部数は、右肩下がりで激減しているが、その大半は「押し紙」の整理が原因である。しかし、「押し紙」を減らしても、読者が減り続けているので、再び「押し紙」が増え、そこでやむなく再度「押し紙」を減らす繰り返しが定着しているようだ。

実質賃金が減り、増税が行われ(ただし大企業は減税)、社会福祉が次々と切り捨てられる時代に、庶民にとって新聞購読料4000円の負担は大きい。スマホを選ぶか、新聞を選ぶか、答えは明瞭だ。新聞社が生き残る条件はほとんどないのだ。残念ながら、ジャーナリズムの質などは、大半の読者にとっては、新聞購読の条件にはなっていない。メディアリテラシーの教育を受けていないからだ。

販売店主がみずから新聞を配達し、購読料を集金するケースも特にめずらしくはない。しかも、先月わたしが取材した販売店では、店主の収入は月額5万円程度だという。従業員の方が高くなっているのだ。こうした状況は、昔は見られなかった。

当然、多くの店主が廃業を考えるようになっているが、新聞社が辞表を受け取らないケースが少なくないという。1年だけ我慢してくれとか、後継者が決まるまで、協力してくれとか泣きついて来るという。後継者がいなければ、新聞社が販売店を管理するか、他の系統の販売店へ配達を依頼せざるを得ないからだ。それでも自主廃業をしようとしたところ、元新聞拡張団の「ならず者」から恫喝されたという話も、第3者から聞いた。

新聞販売店の後継者を捜すのもなかなかむつかしい。公募しても、集まらない。かつては新聞販売店の従業員は、店主になるのが夢だった。店主になれば、それなりの収入が得られた。資金をためてビルを建てた人もいる。ところが、今の時代に店主になっても、アルバイト程度の収入しか得られないのだ。経営が赤字に追い込まれ、結局最後は借金まみれになって巷に放り出される。そんなパターンが定着しているのだ。

◇新日販協の結成を

これは大きな社会問題である。今年、共産党の清水忠史議員が国会で、「押し紙」問題を34年ぶりに取りあげて、問題解決への一歩を踏み出したが、10月の衆議院選挙で落選し、運動は頓挫した。清水議員の落選は、販売店にとっては、たいへんなダメージである。

本来は、NHKや新聞社の社会部が取りあげなければならない大問題であるが、自分のサラリー確保を優先して、「押し紙」問題には取り組もうとはしない。

わたしは「押し紙」問題と、それに伴う販売店主の経済的困難を解決する唯一の方法は、店主が同業組合を結成することだと思う。日販協(日本新聞販売協会)には、これらの問題を解決する力がないので、自主的に別の業界団体を結成する以外に解決策はない。それも秘密結社などではなく、正面から堂々と新団体を立ち上げるべきだろう。秘密結社はかえってよくない。PR戦略が取れないからだ。コンビニの同業組合などは、参考になりそうだ。

新聞社は攻撃してくるだろうが、インターネットを武器に新聞社の社会的不正義を訴えればいい。本来、新聞社の社会部は、販売店の惨状を取材して、公にしなければならない立場なのだから。

新しい業界団体を作り、店主は集団で「押し紙」の損害賠償を求める裁判を起こすべきである。何もしなければ泥船は沈没する。そうならないためには、闘うべきだろう。闘って死ぬのか、闘わずに死ぬのか、それとも解決の道を掴むのか、という単純な選択である。

たとえ新聞業界を去るにしても、1人頭で3000万円から5000万円ぐらいの「押し紙」の賠償金を受け取れる条件を整えるべきだろう。

それを資金に、別の生活の道を考えるべきだろう。