1. 「押し紙」問題の様相に変化、 折込広告の「中抜き詐欺」が急増か?

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2016年12月28日 (水曜日)

「押し紙」問題の様相に変化、 折込広告の「中抜き詐欺」が急増か?

最近、新聞販売関係者から折込広告の搬入枚数が激減しているという話をよく聞くようになった。とはいえ、広告主(スポンサー)が減っているという意味ではない。かつては「押し紙」部数に相当する折込広告が販売店に搬入されていたが、今はそれが搬入されないケースが増えているというのだ。

メディア黒書では、日本の新聞販売制度(新聞社のビジネスモデル)のからくりについて、「押し紙」の負担を折込広告の水増しと新聞社からの補助金で相殺する仕組みになっていると説明してきた。しかし、現在は徐々にこの説明が成り立たなくなっている。

「押し紙」の損害を相殺する道具である水増しされた折込広告と補助金が減ったり、無くなったりして、相殺システムが機能しなくなっているのだ。その結果、全ての負担が販売店の肩にのしかかってくる。

◇最初から折込広告を印刷しない

しかし、販売店サイドは、必ずしも広告主が自主的にABC部数よりも少なめの枚数を発注していると考えているわけではない。もちろんそのようなケースも少なくないが、折込広告の「中抜き」を疑っている店主が増えているのだ。

折込広告の「中抜き」とは、広告主が折込広告を発注した段階から、折込広告が販売店に到着するまでの過程のどこかで、広告代理店が折込広告の一部を抜き取ってしまう行為である。あるいは印刷枚数を減らす。

たとえばある商店が10万枚の折込広告を、B新聞の販売店20店を通じて配布するために、広告代理店と契約を結んだとする。

しかし、B新聞の「押し紙」率が40%とすれば、6万枚あれば、全読者に折込広告は届くことになる。4万枚は過剰になる。

従来は、この4万枚で販売店は「押し紙」の損害を相殺していたのだが、最近は、この水増し分が搬入されなくなったというのだ。と、すれば4万枚はどこへ消えたのか?

答えは簡単で、廃棄されたか、最初から印刷していないかである。印刷はしないが、広告代理店は印刷したことにして、広告主から10万枚分の料金を徴収する。このような手口を広義に「中抜き詐欺」と呼んでいる。

広告代理店による「中抜き詐欺」が増えているというのが最近の販売店の見方だ。

◇警察の調査能力の欠落

「中抜き詐欺」が発覚した例としては、読売広告社の元社員が設立したアルファトレンド(すでに倒産)という広告代理店が、大阪市で貴金属の販売を営む小売販売業者に対して「中抜き詐欺」をはたらいたケースがある。損害額は、年間で約250万円に達していた。

この250万円は2013年に民事訴訟で賠償された。しかし、小売販売業者の怒りはおさまらず、刑事告訴したが不受理となった。調査能力の欠落が原因だと思われる。

この件については、来年、筆者が検察審査会に不服を申し立てる予定にしている。

◇「中抜き詐欺」の実態

参考までにアルファトレンドによる中抜きの実態を示す資料(訴状の一部)を紹介しておこう。

注:写真と本文は関係ありません。