2016年04月22日 (金曜日)
「押し紙」と折込広告の水増し、 瀬戸大橋を渡って消えた「折り込め詐欺」のトラック
日本新聞協会と新聞各社が「押し紙」は1部も存在しないと公言してきた背景にどのような論理があるのか、読者はご存じだろうか?
結論を先に言えば、「新聞社が販売店に搬入する新聞は、すべて販売店からの注文に基づいた新聞なので、押し売り行為に該当しない。従って『押し紙』ではない」という3段論法である。
たとえ新聞販売店で残紙が過剰になっていても、それは押し売りの結果として生じた部数ではなくて、販売店が自主的に注文した新聞であるという主張である。
と、すればなぜ販売店は、配達予定のない新聞を注文するのか?答えは簡単で、新聞販売店に割り当てられる折込広告の枚数は、搬入される新聞の部数と一致させる基本原則があるので、搬入部数が多いと、折込広告の割り当て枚数も増えるからだ。
仮に新聞の卸原価が(1部)2000円とすれば、折込広告による収入が新聞1部に対して2000円を下らなければ、たとえ「押し紙」があっても、新聞販売店は損害を受けない。かりに折込広告の収入が1部に対して2000円に達しない場合は、新聞社が補助金を支給して赤字経営にならないように配慮する。
こうして販売店は経営を維持する一方、新聞社は「押し紙」により販売収入を増やすだけではなく、ABC部数をかさ上げし、高い広告収入を獲得する。新聞社と販売店は、このような取引関係があるのだ。が、それがいま崩壊しようとしている。折込広告が減っているのが原因だ。
ホリエモンの言葉を借りれば、「てかこれ完全に詐欺やん。ぜんぜん問題にならないのはそれだけマスコミの力が強いからだけど弱くなったらヤバイよね」ということになる。
◇「押し紙」問題から、「折り込め詐欺」へ
「押し紙」問題は、新聞社と販売店の間の問題である。それが日本の新聞社のビジネスモデルだ。
と、なればこのシステムで誰が本当の被害者になっているのか。改めていうまでもなく、広告主である。特に折込広告の広告主は、自分たちが予算を組んで製作した折込広告の一部が、新聞に折り込まれることもなく、古紙回収業者の手に渡っているのだからたまったものではない。
広告代理店がクライアントと商談する際に、実配部数(「押し紙」を除いた部数)を提示していれば、折込広告の廃棄は起こらないが、ABC部数を提示するので、事情を知らない広告主は簡単に騙されてしまう。
「押し紙」問題にはメスが入りかけているが、折込広告の水増し問題-「折り込め詐欺」は、これから実態を検証・報道する段階だ。
◇段ボールの中身は折込広告
冒頭の動画は、山陽新聞の販売店から折込広告を回収している場面である。
段ボールの中には、折込広告が入っている。回収業者のトラックを追跡すると、岡山市郊外の「紙の墓場」にたどりついた。フォークリフトを使って、段ボールの荷卸しをしている場面も記録されている。
なお、山陽新聞社の販売会社が販売店に段ボールを提供していた事が、店主が起こした「押し紙」裁判の判決で事実認定さている。
これらの段ボールは、さらに別の場所へ運ばれている。トラックを追跡した知人によると、瀬戸大橋を渡ったところで見失ったという。