1. 森裕子氏に対するジャーナリズムの視点からの回答書、志岐武彦氏が『最高裁の黒い闇』を出版、『財界にいがた』が書評

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2015年09月01日 (火曜日)

森裕子氏に対するジャーナリズムの視点からの回答書、志岐武彦氏が『最高裁の黒い闇』を出版、『財界にいがた』が書評

 【サマリー】 『財界にいがた』(9月号)が、志岐武彦氏の新刊書『最高裁の黒い闇』を紹介している。これは小沢一郎氏が検察審査会の議決で法廷に立たされた事件の舞台裏に、最高裁事務総局の策略があったことを、膨大な内部資料によって検証したものである。

従来、定説となってきた説、つまり検察が捏造報告書により検察審査員を誘導して起訴相当議決を下させたとする説を否定して、最高裁事務総局による謀略説を唱えたものである。

 その根拠となっているのが、情報公開請求によって入手した段ボール2箱分の資料である。小沢氏の起訴は、検察による謀略か、それとも最高裁による謀略か、この点を巡っては志岐氏との間に論争があり、元国会議員の森裕子氏は、志岐氏を名誉毀損で訴え、敗訴した。本書は、こうした挑発行為に対するジャーナリズムの視点からの回答書でもある。

『財界にいがた』(9月号)が、志岐武彦氏の新刊書『最高裁の黒い闇』を紹介している。同誌は志岐氏を取材して、繰り返し小沢一郎検審にかかっている疑惑を報じてきた。そんなこともあってこの事件の発端から結末までを詳しく記述した志岐氏の著書を紹介したようだ。書評は、次の通りである。

■ 『最高裁の黒い闇』の書評

小沢検審にかかっている疑惑とは、審査そのものが実施されていないのではないかというものである。実施せずに、検察審査会の上層機関である最高裁事務総局が、審査会を開いたことにして、みずから起訴相当議決を下して、小沢氏を起訴したのではないかという疑惑である。

まさかそんなことはあり得ないだろうという疑問を多くの人々が持つに違いないが、この本は、段ボール箱にして2箱分にもなる情報公開資料による裏付けに基づいて書かれている。わたしもこの事件を取材する中で、これらの内部資料を検証させてもらい、その中で小沢検審が「架空審査会」であったという確信を得た。

しかし、周知のように小沢氏が法廷に立たされた事件の舞台裏で何が行われたのかという問題に関しては、志岐氏が主張する最高裁事務総局による策略説と鋭く対立する別の説がある。それは検察が、小沢氏を誹謗中傷する内容の捏造報告書により小沢検審の審査員を誘導して、起訴相当議決を下させたとする説である。

◇元国会議員・森裕子氏による提訴

一般的には後者の説が正論として受け止められおり、そのために新説を提唱した志岐氏は、精神病院へ行けといった口汚い誹謗中傷を受けてきた。意見の対立が深まる中で、検察による誘導説を信じている森裕子氏が、志岐氏に対して言論活動の一部禁止とお金500万円を支払うよに求める裁判を起こす事態にもなった。

こうした状況の下で、わたしは検察による誘導説も検証してみた。が、志岐氏の主張が膨大な公文書による裏付けに基づいているのに対して、検察による誘導説を信じている論者の説は、有力な裏付け資料がなかった。

検察が捏造報告書を小沢検審へ提出した事実を根拠に、ごく単純に検察による誘導説を唱えているにすぎない。少なくともわたしはそんなふうに感じた。

あるいは検察による過去の不祥事をあげつらうことで、検察の悪質さを強調し、それを根拠に小沢検審でも悪事をはたらいたと結論づけているのだ。が、これは単なる推測であって、志岐氏が入手した公文書の前には、あまりにも説得力がない。

なかにはわたしが志岐氏の説を一方的に支持して、従来の検察による謀略説をメディア黒書で紹介しないのは、名誉毀損だと言って、提訴をほのめかしてきた男性もいる。この人物については、逆にこちらから恫喝で提訴する準備を進めているが、ジャーナリズムの基本はあくまで言論による論争であるというわたしの立場には変わりない。

そのなわけで志岐氏の新刊には、この問題を取材してきた『財界にいがた』やわたしの思いが込められている。一市民による調査報道だから信用するに値しない、などと考えてはいけない。志岐氏は、旭化成を退職するまでジャーナリズムとは無縁だったが、旭化成に在職中に養った恐ろしい情報収集力と分析力は、わたしの比ではない。だれもが脱帽するに違いない。

小沢検審に関する先入観を払拭して、本書を手にとっていただきたい。読者は、日本の司法を牛耳っているのは、検察ではなく、実は最高裁事務総局であることを知るだろう。また、検察誘導説が誤りであることも理解するだろう。

検察に不祥事が多いのは事実だが、個々の事件は切り離して考えなければならない場合もある。検察をひとまとめにして、「悪」と決めつける態度は改めなければならない。