1. 東電の元経営者3人が起訴された背景に『財界にいがた』の功績、小沢一郎検審との接点に警鐘を鳴らしていた

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2015年08月19日 (水曜日)

東電の元経営者3人が起訴された背景に『財界にいがた』の功績、小沢一郎検審との接点に警鐘を鳴らしていた

【サマリー】今年の7月、東京第5検察審査会が東電の元経営陣3人に対して起訴を相当とする決議を下した。意外に知られていないが、こうした決定の背景に『財界にいがた』のある報道が影響した可能性がある。

 同誌は小沢検審を担当した第5検審に「架空審査会」の疑惑があった過去を暴露すると同時に、東電の元経営者に対する起訴が相当か否かを審議する役割が第5検審に委ねられている事実を知らせた。世論を喚起するためである。

 東電幹部の起訴により、検察審査会のイメージがよくなっても、過去の事実が消えるわけではない。

今年の7月、東京第5検察審査会が東電の元経営陣3人に対して起訴を相当とする決議を下した。これはすでに周知の事実であるが、このような決定を下すに至った影の立役者がいるのを読者はご存じだろうか。

新潟県を地盤とする経済誌『財界にいがた』である。同誌は、検察審査会を管轄している最高裁事務総局に一定の影響を及ぼしたと思われるあるテーマを断続的に報道してきた。

そのテーマとは新潟県出身の元参院議員・森裕子氏が、元旭化成の役員で『最高裁の罠』の著者である志岐武彦氏に対して起こした名誉毀損裁判の報道である。

この裁判は、志岐氏がみずからのブログなどで森氏を批判したのに対して、森氏が対抗手段として言論活動の一部禁止などを求めて起こしたものである。お金500万円も求めた。

両者のトラブルの発端は、東京第5検察審査会をめぐる小沢一郎検審にまつわる疑惑をどう解釈するのかという見解の違いにあった。

周知のように小沢氏は、2010年9月、東京第5検察審査会が起訴相当議決を下したことで強制的に法廷に立たされることになった。ところが議決が下された日が、ちょうど民主党の代表選挙の日と重複していたことなどから、公権力の謀略ではないかという噂が広がった。

そこで調査に乗り出したのが、森議員(当時)と志岐氏だった。しかし、両者はある時期から袂を分かつ。森氏が、検察が捏造報告書で第5検審の審査員を誘導して小沢氏に対する起訴相当議決を下させたとする主張を展開したのに対して、志岐氏は第5検審そのものが最高裁事務総局によって仕組まれた「架空検審」で、最高裁事務総局がみずから小沢氏を「起訴」したとする説を展開した。

本来こうした公益性が高い大問題は、特定の表現が名誉毀損に該当するかどうかといった枝葉末節な議論を排して、事件の中身そのものを議論しなければならない。が、裁判の中では、この点には踏み込まず志岐氏が勝訴した。勝敗にそれほどこだわっていなかった志岐氏は、勝訴したが納得できなかったのではないか。

◇小沢事件も東電事件も第5検審が担当

志岐氏が勝訴したのを受けて、「志岐武彦氏を支援する会」は2014年8月、東京・池袋の豊島区民センターで、裁判を総括するためのシンポジウムを開いた。わたしが司会を務め、志岐氏と石川克子氏(市民オンブズマンいばらき幹事)が具体的に第5検審「架空説」を説明した。

その内容自体は、メディア黒書で繰り返し報じてきた通りであるが、実はシンポジウムを主催した「志岐武彦氏を支援する会」は、一見するとこの事件とは無関係だが、総括的な視点でみると極めて重要な位置にいるある人物をゲストとして招き、発言者に加わってもらっていた。

その人物とは、東電幹部らを刑事告訴している原告団のひとりである熊本美彌子氏だった。当時、東電幹部らに対する告訴は不起訴になり、原告の人々は検察審査会に審査の申し立てを行っていた。

これに対して最高裁事務総局は、この事件を東京第5検察審査会へ割り当てたのである。いわくつきの小沢事件を審査した第5検審に、東電幹部がかかわった重大な事件の審査を委ねたのである。

熊本氏らがかかわっている係争を東京第5検察審査会が担当している事実を前に、過去に第5検審でなにが行われたのかを知らせることは意義深い。

こうした特殊な状況を考慮したのか、『財界にいがた』は志岐氏と石川氏の発言は言うまでもなく、熊本氏の発言も詳しく報じたのである。以下、PDFでその記事を紹介しよう。タイトルは、「福島原発事故の刑事責任追及でカギを握る″霞が関の検察審査会″」。

■福島原発事故の刑事責任追及でカギを握る″霞が関の検察審査会″

なお、志岐氏の新刊書『最高裁の黒い闇』は、配本が終了した。検察審査会の恐るべき実態が克明に描かれている。

改めて言うまでなく、第5検審が東電幹部を起訴に持ち込んだからといって、小沢検審の疑惑が消えるわけではない。第5検審のイメージがよくなっても、歴史の事実は変わらない。