1. 『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』(日本文芸社)の問題点と今後の解明ポイント、だれが捏造報告書を外部へ持ち出したのか?

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2015年07月27日 (月曜日)

『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』(日本文芸社)の問題点と今後の解明ポイント、だれが捏造報告書を外部へ持ち出したのか?

【サマリー】小沢事件における残された解明点は、捏造報告書を何の目的で誰が外部に持ち出し、インターネットで拡散したのかという点である。持ち出しのルートは、検察関係者が自ら持ち出すか ,小沢裁判の被告側が持ち出すかのいずれしかない。

 この点について過去の志岐VS森裁判で、小沢一郎氏と弘中惇一郎弁護士らを尋問することで検証される可能性があったが、結審によりそれも消えた。この事件の解明ポイントのひとつはこの点である。さらに外部に出た報告書をだれが何の目的で、インターネットを使ってばら撒いたのかも明らかにする必要がある。

2013年8月に刊行された『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』(日本文芸社)という本がある。小沢一郎氏をはじめ、20人の識者によって書かれた本で、枝葉末節の違いはあるものの、小沢事件の本質は検察権力による「暴走」によって起こされたとする視点を基調としている。

執筆者が20人の多人数ということもあって、個々の原稿に枚数制限があるのか、それぞれの執筆者が小沢事件を深く取材して具体的な資料や証言を根拠に検察権力の「悪」を追及しているというよりも、小沢氏の無罪判決を大前提として検察を巨悪とする一般論が展開されている。

しかし、小沢事件に関する限り、検察諸悪の根源説は慎重に再考する必要がある。検察が関係した他の事件とは区別する必要がある。

幸いに、小沢事件に関する報道としては、事件の背後に検察ではなく、検察審査会の上部機関である最高裁事務総局の策略があるとする別の説もある。これは元旭化成役員の志岐武彦氏と「市民オンブズマンいばらき」の元事務局長・石川克子氏が、「役所」に対して繰り返し情報公開請求を行って入手した膨大な公文書を裏付けとして提唱している説である。

これら2つの説を検証してみると、明らかに志岐・石川説の方が説得力があるとわたしは感じた。『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』は、調査報道というよりも小沢無罪に乗じた一般的な検察批判である。その中に小沢事件を位置付けたにすぎない。

◇だれが捏造報告書を持ち出したのか?

小沢事件においては、なぜ慎重に事実を検証する必要があるかを暗示する肝心な点を紹介しよう。検察をひとまとめにして、「悪」とするのは間違っている。検察が「悪」で、小沢氏が「善」といった単純な構図ではない。

小沢事件の検証ではだれが(捏造)報告書を外部へ持ち出し、マスコミにリークしたのかという点を無視することはできない。

捏造報告書の流出事件については、記憶されている読者も多いと思う。これは2012年5月ごろに小沢検審に関する検察の捏造報告書が外部へ流出した事件である。これを機に『週刊朝日』も検察を批判する記事を掲載して、「検察諸悪の根源説」へ世論を誘導したのである。

事実、こうしたメディアの動きの中で、小沢検審の審査員らは検察が作成した捏造報告書によって騙され、小沢氏に対する起訴相当議決を誤って下したとする世論が生まれたのだ。

しかし、捏造報告書を外部へ持ち出すための策略を誰が考案し、実行したのかという肝心の問題を明らかにしない限り、真実は分からない。誰が何のためにどのような方法で捏造報告書をマスコミにリークしたのか?

捏造報告書とはいえ、これらの公文書は検察が厳重に管理しているわけだから、そう簡単に外部へ持ち出せるはずがない。

流出ルートに関して、わたしは複数の法律の専門家を取材した。その結果、流出ルートは、窃盗などのケースを除くと基本的には次の2つしかないことが分かった。

1、検察内部の職員による報告書の持ち出し。

2、裁判のもう一方の当事者である小沢弁護団・小沢氏による報告書の持ち出し。

「1」「2」も違法行為である。

◇黒幕の特定が必要

だれが捏造報告書を外部へ持ち出したのかという点について、わたしが知る限りでは、過去に一度だけ解明の機会があった。それは森裕子元参院議員が志岐武彦氏に対して、言論活動の一部禁止などを求めた名誉毀損裁判(志岐氏の勝訴)だった。その中で志岐氏側は、小沢氏本人と小沢氏の代理人・弘中惇一郎弁護士の証人尋問を申し立てる旨を明らかにした。

が、残念ながら裁判は裁判長の判断で、早い段階で結審してしまった。結局、尋問というかたちで「2」についての解明は行われなかった。

かりに「1」の説が正しいとすれば、『20人の識者がみた「小沢事件」の真実』は基本的には信頼できる内容ということになる。しかし、「2」であれば小沢事件に関しては、抜本的に見直す必要がある。

もちろん捏造報告書が外部へ運ばれた後、インターネットを使ってそれを拡散した黒幕も特定する必要がある。

検察に問題があることは認める。小沢氏がマスコミにバッシングされたことも事実である。が、小沢事件の背景で誰が何をやったのかは、まだ完全には解明されていないのである。