1. 森裕子議員の不正税還付問題で新潟地検が捜査開始、『財界にいがた』が告発者の志岐氏の手記を掲載

「森裕子VS志岐武彦」の裁判に関連する記事

2018年06月06日 (水曜日)

森裕子議員の不正税還付問題で新潟地検が捜査開始、『財界にいがた』が告発者の志岐氏の手記を掲載

『財界にいがた』(6月号)が、「森裕子参議院議員の不正税還付問題で新潟地検が3度目の受理」と題する記事を掲載している。執筆者は、元旭化成役員の志岐武彦氏である。志岐氏は、森氏を新潟地検へ詐欺と政治資金規正法違反容疑で告発していた。その告発が先月20日に受理されたのを受けて、手記を寄稿したのである。

森氏は志岐氏から過去に2度の刑事告発を受けている。いずれも政治資金の寄付者を対象にした還付金制度--寄付者は税務署で所定の手続を踏めば、寄付額の30%にあたる金額を還付金としてバックしてもらえる制度--を利用して、自分で自分の政党支部に政治献金を行い、莫大な額の還付金を税金から受け取っていたというものである。

たとえば1000万円を寄付すれば、寄付者はその30%にあたる300万円の還付金を受けることができる。政治家の場合は、自分の政党支部へ寄付であるから、手持ち金が1300万円になる。これは違法行為である。従って普通の政治家は、税務署で還付金を受ける手続をしない。

新潟地検は、2度の告発をいずれも受理している。

ちなみに森氏が受けた還付金の額は、2004年から2015年までの11年で最高で約2700万円に達している可能性がある。明細は、次の表に示す通りだ。

◇詐欺と政治資金規正法違反容疑

今回、志岐氏が告発した根拠は、詐欺と政治資金規正法違反容疑である。過去2回の刑事告発とは、若干異なった部分の不正を指摘している。幸いに、『財界にいがた』のウエブサイトに記事の一部が掲載されているので、紹介しておこう。

 ■『財界にいがた』の記事

なお、不正の構図は若干複雑なので、筆者が今年の2月22日にメディア黒書に書いた記事を以下に引用しておこう。構図が分かれば、いかに悪質な手口であるかが分かる。

なお、現在、新潟知事選が行われており、この時期に森氏を批判する記事を掲載することに対して、政治的な意図があるのではないかと勘ぐる読者がいるかも知れないが、そのような意図はない。

■事件の構図を解説する

森裕子議員が代表を務める政治資金管理団体にYMF経済研究会という組織がある。政治家が所属する組織には、地元の政党支部をはじめ、政治資金管理団体などがあり、運営上の法的な規則が微妙に異なっている。

事件の舞台は、いずれも森氏が代表を務めるYMF経済研究会と、彼女の地元である新潟県参議院選挙区第1総支部である。

政治献金の寄付先として、もっとも一般的なのは地元の政党支部である。しかし、これだけでは十分に政治献金が集まらない場合がある。そこで議員たちは、別に政治献金を集める方法を考案することがある。そこでよく使われる方法が、政治資金管理団体の設立である。森氏の場合は、YMF経済研究会がそれに該当する。

多くの政治家が政治資金団体を設立し、オフィシャルサイトを立ち上げ、全国規模ではでに政治献金を募るのである。森氏も例外ではなかった。

森氏は支援者の協力を得て2011年に、YMF経済研究会を立ち上げた。そして全国規模で政治資金を集めるようになった。YMF経済研究会の設立パーティーには、今回の告発者の志岐武彦氏(東京都在住)も参加している。

YMF経済研究会の政治資金の実態について、志岐氏は告発状で次のように述べている。

「平成26年(2014年)のYMF収支報告書の個人寄付欄を見ると、392名、420件の個人寄付があり、寄付総額は1332万円であった。」

この時期は、森氏が議員を失職していた時期である。

◆2013年の落選が引き金

事件の引き金は、森氏の失職だった。2013年の参院選で森氏は落選したのである。これがすべての引き金だった。

寄付金1332万円を集めた2014年は、前述したように森氏が議員を失職していた時期である。失職している時期であっても、もちろん政治資金を集めることは認められているが、代表者が直近の国政選挙に出馬しなかった場合は、有権者が政治資金団体に寄付しても、還付金は受けられない。森氏は2015年の国政選挙では候補にもならなかった。従ってYMF経済研究会は、2015年に還付金制度の適用除外となったのである。

ちなみに還付金というのは、有権者が政治資金管理団体や政党支部などに政治献金を行った場合、所定の手続を経て、寄付額の30%を払い戻してもらう制度の下で得られるお金のことである。たとえば100万円を寄付すれば、30万円が還付金として戻ってくる。このような還付金制度が導入されている理由は、寄付者の負担を少しでも軽減して、政治参加を促すことである。

政党支部への寄付であれば、還付金の請求が認められるが、政治資金管理団体に対する寄付の場合は、既に述べたように、認められない場合があるのだ。森氏のYMF経済研究会がそれに該当した。

◆森ゆうこオフィシャル・サイトの記述

こうした事情を森氏も知っていたらしく、みずからのオフィシャル・ウエブサイトに次のような告知をだした。

「【寄付金控除を希望される皆様へ】森ゆうこへの寄付は、政治資金規正法上と租税特別措置法上、森ゆうこが長を務める政党支部「新潟県参議院選挙区第1総支部」への寄付として扱われます。

 YMFへお送り頂いた寄付金は、その手続きを代行させて頂きます。
(寄付控除を希望しない方は、今まで通りYMF経済研究会への寄付となります。)

 寄付控除をご希望の方はお申し出下さい。」

オリジナルの記述のページ

森氏は、YMF経済研究会に寄付された政治献金を、地元の新潟県参議院選挙区第1総支部への寄付として扱うことを告知して、寄付を呼びかけていたのである。

ちなみにこの告知は、森氏が国会議員に当選した後に削除された。

このあたりの背景について、志岐氏の告発状は次のように述べている。

「披告発人らは、支部の名前で寄付しても(寄付を募っても、の意味)寄付が集まらないので、『森ゆうこ』の名前を使って、YMFで寄付を集めることとし、寄付者に税還付が受けられないことを知らせず、『披告発人(森氏)への寄付は支部の寄付として扱われる』と虚偽の発信をすることで、寄付金をYMFの口座に振り込んでも税還付ができると誤解させて寄付を募ったものである。」

森氏らは、実際にYMF経済研究会に振り込まれた寄付金のうち、167名分を政党支部への寄付とみなして、新潟県参議院選挙区第1総支部の政治資金収支報告書に記載したのである。これは、虚偽記載に該当する。

◆公正証書原本不実記載罪

次に森氏らは、この167名のために還付金を交付させる手続を選挙管理委員会で行った。選挙管理委員会は、167名による寄付が、実はYMF経済研究会に対して行われた事実を知らなかったと思われる。と、いうのも新潟県参議院選挙区第1総支部の政治資金収支報告書に167名の名前と寄付金額が、虚偽記載されていたからだ。事実を知らないまま、167名分の寄付金控除の書類を交付したのである。このような方法で森氏らが、選挙管理委員会に還付金を受け取るための寄付金控除の書類を交付させたことは、公正証書原本不実記載罪にあたる。

◆還付金の財源は国民の血税

167名の寄付者は、寄付金控除の書類を税務署に提出することにより、総額で150万円の還付金を受けることができる。実際に給付金を受け取ったか否かは不明だが、問題は森氏らが不正な手段で還付金を受け取らせるための手続を行った事実である。このような行為は詐欺に該当するといっても過言ではない。

改めていうまでもなく、この150万円の財源は国民の血税である。

以上が告発状と志岐氏の取材をもとに、筆者が組み立てた事件の概要である。

◆森議員は取材拒否

念のために筆者は、2月21日、2度にわたって森裕子議員の事務所に取材を申し入れた。告発状がまだ届いていないので取材には応じないとのことだったので、筆者の手元にある告発状を事前に送付して、それを基に取材に応じるように申し入れたが、やはり取材は拒否するとのことだった。
従って森議員の主張に関しては、取材が実現すれば、紹介したい。

個人的な見解になるが、森氏がオフィシャル・サイトで行った告知によって、YMF経済研究会への献金を新潟県参議院選挙区第1総支部への献金と見なされるかどうかが、起訴・不起訴の分岐点になるのではないか。常識的には認められないだろう。他の失職した元議員らのケースについても調査する必要があるだろう。

志岐氏の告発状

 

【注釈】

告発後、公正証書原本不実記載罪については、取り下げ、修正した告発状が再提出された。次のPDFが修正後のものである。

志岐氏の告発状(修正したもの)