1. 佐賀新聞の「押し紙」裁判、原告・寺崎氏が販売局員のハラスメントを克明に綴った陳述書を提出

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2019年08月20日 (火曜日)

佐賀新聞の「押し紙」裁判、原告・寺崎氏が販売局員のハラスメントを克明に綴った陳述書を提出

佐賀新聞の元販売店主・寺崎昭博氏が起こした「押し紙」裁判で、去る7月1日に同社の販売局の実態を克明に綴った寺崎氏の陳述書が提出された。陳述書は、原稿用紙に換算すると60枚をこえる分量で、寺崎氏が販売店主になった経緯から、「押し紙」により廃業に追い込まれるまでの経緯を書いている。ABC部数をかさあげする手口にも言及している。

この裁判は2016年6月に寺崎氏が起こしたものである。請求額は8186万円。最初、寺崎氏が江上武幸弁護士に相談し、「押し紙」弁護団が結成され、提訴に至った。

地方紙を舞台とした「押し紙」裁判ということもあって、あまり話題になっていないが、裁判の中で新聞社販売局の前近代的な体質が浮き彫りになっている。

次に引用する陳述書のくだりは、寺崎氏が販売局員から、「押し紙」を買い取らなければ、商契約を終了すると脅される場面である。

 A担当が契約書を持ち帰れば、それは即廃業を意味します。

 A担当は「押し紙を買わないと言われれば自分の立場上そうするしかない。」と言われました。私は、宮崎担当にこれ以上言っても仕方がないと思い直し、契約書を受け取りました。受け取った契約書の作成日は、平成27年4月1日と遡って記載されていました。

 毎回資金ショートを起こすたびに思い悩んできたのですが、この時もなぜ借金を増やしてまで押し紙を買わされなければならないのか、決して読者を増やす努力をしていないわけではないのに、なぜ私だけが経営努力が不足しているように被告に言われ、社会全体の流れとして新聞の購読率の低下を被告は認めながらも、それがさも販売店の努力不足が原因であるかの如く論点をすり替えられ続けられなければならないのか、そして、何か言おうとすれば契約を盾に脅され続ければならないのか、被告が持っているはずの新聞社としての倫理観はどこに消えてしまったのか、借金を増やしてまで、在りもしない読者に対してチラシを貰い続け、押し紙代金のためにそれに正当な利益を加えてまで押し紙代金を払わされなければならないのか、様々な思いがあふれ出てきました。

 

◆新聞人の見解、「『押し紙』は一部も存在しない」
日本の新聞社は、「押し紙」を柱とした販売政策で事業を拡大してきた。「押し紙」問題が本格的に浮上してきたのは、1970年代であるから、それか50年近くが過ぎている。だが、大半の新聞社はいまだに「押し紙」をやめない。読売新聞社や日本新聞協会に至っては、今も「押し紙」は一部も存在しないと開き直っている。

その一方で、ジャーナリズムの旗を掲げている。これだけ甚だしい言行不一致の例は、珍しいのではないか。おそらく「押し紙」制作を廃止すれば、巨大化しすぎた事業を支えきれなくなるからだろう。

寺崎氏の陳述書の全文は次のとおりである。訴状と「押し紙」一覧も併せて紹介しておこう。

寺崎氏の陳述書(販売局員名は匿名にした)

訴状

「押し紙」一覧

 

写真:江上武幸弁護士(左)、原告の寺崎昭博氏(右)。背景の新聞は、証拠として弁護士事務所に持ちこまれた「押し紙」