1. 「しばき隊事件」の大阪地裁判決を検証する、神原元弁護士は何を根拠に「原告のストーリーは全て否定された」とコメントしたのか? 暴行現場の録音記録との著しいギャップ

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2018年03月24日 (土曜日)

「しばき隊事件」の大阪地裁判決を検証する、神原元弁護士は何を根拠に「原告のストーリーは全て否定された」とコメントしたのか? 暴行現場の録音記録との著しいギャップ

2014年に起きた「カウンター」、あるいは「しばき隊」と称するグループのメンバーが、大学院生のMさんに暴言と暴力で襲いかかり、ひん死の重症を負わせた事件で、司法判断が下った。この事件では、刑事処分のあと、Mさんが損害賠償を求めた民事訴訟が行われている。その第1審の判決が19日に下されたのだ。大阪地裁が下した判決の概要は次の通りである。

(1)被告エル金および被告伊藤大介は原告に対し、79万9,740円及びこれに対する平成26年12月17日から支払い済みまで年5分の割合による金員を払え。

(2)被告凡は、原告に対し、1万円及びこれに対する平成26年12月17日から支払い済みまで年5分の割合による金員を払え。

(3)原告の被告エル金に対するその余の主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却する。

(4)原告の被告凡に対するその余の主位的請求及びその余の予備的請求をいずれも棄却する。

(5)原告の被告伊藤に対するその余の請求をいずれも棄却する。

(6)原告の李信恵及び松本英一に対する請求をいずれも棄却する。

(7)被告伊藤及び松本の反訴をいずれも棄却する。

(8)訴訟費用は、被告エル金に生じた費用の11分の4及び原告に生じた費用47分の1を被告エル金の負担とし、被告凡に生じた費用の220分の1と原告に生じた費用の188分の1を被告凡の負担とし、被告松本に生じた費用の5分の3と原告に生じた費用の188分の33を被告松本の負担とし、被告伊藤に生じた費用の188分の53を被告伊藤の負担とし、その余を原告の負担とする。

(9)この判決は第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。

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◇「原告のストーリーは全て否定された」

この事件の被告は事件の現場にいた5名である。5名のうち3名に損害賠償を命じたわけだから、少額とはいえ客観的に見れば原告Mさんの勝訴だが、原告側は「敗訴」の認識である。と、いうのもひとつには李信恵氏らに対する賠償命令が認められなかったからだ。

逆に被告側は、この判決を勝訴と受け止めているようだ。現に自由法曹団常任幹事の神原元弁護士は、判決が下った19日の夜、ツイッターに宴会写真を掲載し、次のようにコメントしている。

「しばき隊リンチ事件」「主水事件」「M君事件」等と称された事件に判決が下りた。結論は、共謀なし。李信恵さんの責任はなし。一部に誤った認定はあったが、原告のストーリーは全て否定された。「しばき隊がリンチ事件を起こした」等とデマに踊った人々は猛省すべきである。今後、誹謗中傷は許さない

19日の神原弁護士のツィート

「原告のストーリーは全て否定された」とまで断言したのである。

このツィートに不快感を感じた人も多いらしく、たとえば作家の森奈津子氏は、次のようにツィートしている。

リンチ事件裁判判決の夜、カウンター界隈の人たち&弁護士が楽しそうな酒宴の写真をツイートしてたのには苦笑しましたわ。互いの労をねぎらう酒宴自体はいいけど、裁判で加害が認められて賠償金が発生してるのに、反省してなさそうな姿をわざわざアピール、世の反感を招くって、すごいサービス精神。w

しばき隊リンチ事件被害者の大学院生Mさんは、在日コリアン差別に義憤を感じ、反差別運動に身を投じた方です。そんな彼が仲間に対する疑念を口にした結果、あのような凄惨なリンチに……。私は多くの方々に、愛する兄弟・息子・恋人・男友達があのような目に遭ったら、と想像していただきたいのです。

出典

◇「答ええ、こら(しばく音)、答ええ、こら(しばく音)」

さて、事件を検証する際に、不可欠なのは客観的な事実の検証である。この作業を避けると、評価の下しようがない。議論の前提が崩壊する。第3者がこの事件を知る上で、最も有力な「資料」は、事件の終始を録音した音声である。録音したのはMさんである。Mさんが呼び出しを受けた際に、こうした事態になりうることを予測して、念のためにレコーダーを持参したのである。

その音声記録には、罵倒する声や骨が砕けるような鈍い音が鮮明に録音されている。ひん死の重傷を負うまでの客観的な記録である。

次に紹介するのは、高島章弁護士が公開した録音テープの解説である。

録音を聞く限りでは、誰が暴行に加わったかどうかは別にして、暴行事件は客観的な事実である。神原弁護士は、何を根拠に「原告のストーリーは全て否定された」とコメントしたのか、よく分からない。暴行と罵倒は客観的な事実だという前提に立って、事件を評価すべきだと思うのだが。この事件がなかったことにする事は、南京大虐殺はなかった、あるいは従軍慰安婦はなかったとする極右の思考方法とかわらない。

筆者は、神原弁護士に取材を申し入れようと考えている。何を根拠に「原告のストーリーは全て否定された」とコメントしたのか。また、Mさんの人権をどう考えているのか、自由法曹団常任幹事としての見解も聞きたい。これらの点を明らかにしない限り、事件と裁判の検証は進まない。