アルジェリアの人質事件と先進国による資源収奪の問題
アルジェリアで人質事件が発生したのを機に、安倍内閣が自衛隊法改正を検討しはじめた。そして読売新聞がそれを煽る社説を掲載している。
正当防衛などに限定されている武器使用基準の緩和のほか、陸上自衛隊には警護任務の特殊な訓練が求められる。これらの課題について、しっかり論議することが大切だ。(26日)
自衛隊制服組の防衛駐在官は現在、世界全体で49人いるが、アフリカはエジプトとスーダンの2人だけだ。着実な増員が必要だ。紛争地域に進出した日本企業を守るには、各地域やテロ対策の専門家を育成し、情報収集・分析能力を高めることが急務である。(23日)
テロを口実にして自衛隊の海外派兵を押し進める手口は、自民党政権の常套手段である。典型例としては2001年9月11日の同時多発テロを機に、テロ対策特措法を成立させて、自衛隊をインド洋に送りだした例がある。
テロ対策特措法が成立する前は、周辺有事法が自衛隊の海外派兵の口実になっていたが、活動範囲が日本の周辺に限定されていたために、世界中の紛争地帯へ自衛隊を派兵するわけにはいかなかった。この壁を同時多発テロを機にテロ対策特措法を成立させることで突破したのである。
◆タブー視される収奪の問題
さて、アルジェリアの人質事件でマスメディアがタブー視している事柄がある。先進国の多国籍企業による資源収奪の問題である。「収奪」という言葉は、強制的な持ち帰りという意味があり、厳密に定義に当てはまらないかも知れないが、多国籍企業が自衛隊の支援を受ければ明白な「収奪」になる。
標的となったのは、イナメナスの天然ガス工場。犯人グループが、「仏軍のマリ空爆中止」など政治的な要求のみをかかげて、身代金を要求していないことから察すると、政治目的の犯行だった。また、日本人が標的になっていた可能性は、大手メディアも報じている。
資源の収奪という問題は、古くからある。たとえばヨーロッパの繁栄は、ラテンアメリカの金がもたらしたとも言われている。
事件が発生した後、わたしはTwitterで、多国籍企業による資源収奪の問題を指摘した。すると、
?「 その資源のおかげで、こうしてツイートできるのでは。」
「アルジェリアの資源は、資源のない日本にとって必要だし、その利権とそこで働く日本人の安全を守れって、アルジェリアを満州に置き換えたら、満蒙は日本の生命線と言っていたころと同じパターン」
これらのコメントの評価はともかくとして、多国籍企業が先頭に立って、他国の資源を持ち帰り、自国を潤していることは事実である。それゆえにタブー視される問題なのだ。
◆多国籍企業の防衛部隊
安倍政権がもくろみ、読売が主張している自衛隊法の改正は、他民族の立場をまったくかえりみない暴論である。第3世界の国々から資源を自国へ持ち帰っていながら、現地で紛争が発生した場合は、自衛隊を派兵して戦争するというのだから、利己主義の塊である。
海外派兵の口実は、「国際協力」ということになっているが、実態は多国籍企業の防衛である。この点をマスメディアは完全に隠している。
企業防衛としての海外派兵は、日本企業の海外進出が始まった1980年代の後半から、連動して海外派兵の要求が政治課題として浮上してきたことでも明らかだ。日本企業の活動スタイルが国内から、国外へシフトするに伴って、多国籍企業の防衛体制が求められるようになったのである。
従って多国籍企業の支援という観点から言えば、1996年の橋本内閣の時代に始まった構造改革と同じ脈絡にあるともいえる。構造改革とは、多国籍企業の国際競争力をつけるために、それに必要な法改正を行い、政治や行政のシステムを変えていく改革を意味している。
自衛隊法の改正の後に、憲法9条の「改正」が来ることは言うまでもない。