新聞業界の裏面、「立派な入れ墨ですね」
現在では影が薄くなったが、かつて悪質な新聞拡販が横行した時代がある。ビール券や洗剤をエサにして、新聞の購読契約書に捺印させる。拡販員から恫喝されたという話も絶えなかった。新聞拡販は水面下の社会問題として、認識されていた。
新聞販売の世界には、暴力団が根を張っているのではないかとの見方もあった新聞販売の世界とならず者のかかわりを調べる最も簡単で効率的な方法は、新聞販売の業界団体が温泉地で開催する総会の日程をあらかじめ把握しておき、当日に現地へ足を運ぶことだ。
総会が終わると、100人とも200人ともつかない新聞人が、宴会の前の時間帯を利用して、一斉に大浴場へ殺到する。その現場に足を運ぶと、必ず湯けむりの中に桜や魚の入れ墨が現れる。写真撮影はできないが、新聞業界の裏側がビジュアルに観察できる。
「立派な入れ墨ですね」筆者は、新聞社の販売局員がそんなおせじを言うのを聞いたことがある。この話をある雑誌に書いたところ、没にはならなかったが、以後、一切連絡がなくなった。
これがジャーナリズムをうんぬんしている団体が発行する雑誌なのだから、ある意味では驚きに値する。だが、タブーとはそうしたものなのだ。