1. 読売のポダムと朝日のポカポン 新聞人を世論誘導に悪用したCIAの大罪

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2013年01月25日 (金曜日)

読売のポダムと朝日のポカポン 新聞人を世論誘導に悪用したCIAの大罪

23日付け東京新聞が「シリーズ日米同盟と原発」で、原発を導入した読売新聞の正力松太郎を取り上げている。「新聞王 原発の父に 豪腕で初の建設へ」と題するルポである。

ルポの中身は、米国が正力松太郎を利用して、原子力の「平和利用」を日本に持ち込もうとしたというものである。

名誉欲か、それとも政治的野心か、今となってはほとんど知るすべはない。が、マスコミ界から政界入りし、原子力の平和利用で旗振り役を務める正力は、米国にとって頼もしい存在だった。日本の反核世論封じ込めを狙う米国の対日戦略に沿うものだったからだ。

米国公文書館に保管されている文書によると、CIAは読売の正力を「ポダム」を呼び、朝日の緒方(竹虎)を「ポカポン」と呼んでいたという。米国がメディア戦略として新聞を利用していたことを示唆する事実である。

CIAの文書は、読売のポダムを高く評価している。

ポダムは協力的だ。親密になることで、彼が持つ新聞やテレビを利用できる。ポダムとの関係ができてきたので、メディアを使った反共工作を提案できる。

読売新聞や日本テレビを利用した反共宣伝の戦略が、CIAから提案された背景には、国際社会の中でソ連が影響力を強めていた事情もある。その結果、日本では、メディアを世論誘導に利用する戦略が、国民が知らないところで進行していたのである。その先兵となったのが、読売の正力である。

このような事実について、読売は反省しているのだろうか。

最近、読売の主筆兼会長で新聞文化受賞者の渡邉恒雄氏が『反ポピュリズム論』(新潮新書)を出版した。著書の内容については、改めて言及する機会があるかも知れないが、わたしの関心をひいたのは反ポピュリズム論よりも、むしろ渡邉氏がみずから政界を動かしているエピソードを独白している点である。

たとえば「自自連立で小沢・野中の橋渡し」を行ったことを告白している。有権者から選挙で選ばれていない者が、日本の政治を動かしているのである。 新聞人が政界工作の役割を演じる是非は別として、新聞人としての誇りなど捨ててしまったのかという思いにかられる。

ちなみに渡邉氏が率いる読売グループは、最近、読売の方針にそぐわない者に対して次々と裁判を起している

このような人物が新聞業界に君臨していることに対して、強い批判の声が上がらないのも不思議だ。戦いを回避する傾向すらある。それどころか出版業界全体が再販問題や消費税問題で渡邉氏の政治力に期待しているとの説もある。

正力・渡邉といったタイプの人物が日本のメディア界に君臨してきた事実は重大だ。