1. 新聞に対する軽減税率を考える 折込チラシの「水増し」「中抜き」と「文化的商品」は両立しない

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2014年02月12日 (水曜日)

新聞に対する軽減税率を考える 折込チラシの「水増し」「中抜き」と「文化的商品」は両立しない

昔から「ジャーナリズムの役割は、権力の監視」と言われてきたが、現代日本の新聞社が採用しているビジネスモデルの下で、新聞ジャーナリズムは権力監視の役割を果たすことができるのだろうか?

新聞社のビジネスモデルは、新聞の販売収入と広告収入を主要な収入源としたものである。これに「押し紙」政策が連動している。具体的には、次のような構図になっている。

?新聞社は新聞販売店に対して「押し紙」をすることで、より多くの販売収入を獲得すると同時に、新聞の公称部数(ABC部数)をかさ上げする。

?広告の媒体価格、とりわけ政府広報など、公共広告の媒体価格は、ABC部数の序列によって決められるので、「押し紙」によりABC部数をかさ上げさすることで、広告収入も増やせる仕組みになっている。

次に示すのは、新聞の政府広告の新聞社別の価格を示したものである。トップは読売で、1回の掲載料が5000万円を超えている。ABC部数の序列に沿った価格設定になっている。

          ■政府広告の新聞社別の価格??

?「押し紙」の負担を被る販売店に対して、新聞社はある程度の補助金を提供して、負担を軽減する。このような構図は、補助金を提供して、その資金で「押し紙」を買い取ってもらい、ABC部数をかさ上げする仕組みとも解釈できる。

?一方、販売店に搬入される折込チラシは、「押し紙」を含む新聞の搬入部数に準じているので、「押し紙」が存在する販売店では、広告主が自主的に折込チラシの発注枚数を減数しない限り、折込チラシも過剰になる。

その結果、冒頭の動画に記録(店主の内部告発)されているように、広告主に秘密裏のうちに、折込チラシを捨てることになる。

          ■岡山県民共済の折込チラシ大量廃棄  

これが日本の新聞社が構築してきたビジネスモデルである。ジャーナリズムとは縁もゆかりもない、とんでもないモデルである。

◇チラシの水増しから「中抜き」へ

改めて言うまでもなく、折込チラシを捨てていながら代金を徴収する行為は、刑法上の詐欺に該当する。そのために、折込チラシの水増しが社会問題になってからは、折込チラシが販売店に到着する前の物流過程で、広告代理店がチラシの「中抜き」を断行するケースが現れた。

次に示すのは、広告代理店・アルファトレンドによる「中抜き」を広告主である(株)バースデーが発見し、損害賠償を求めた裁判の中で、認定された「中抜き」の実態である。

          ■折込チラシの中抜き一覧

約1年のあいだに広告主が発注した253万枚のうち、66万枚が「中抜き」の被害にあっていた。さらに66万枚のうち、少なくとも42万枚は印刷すらされていなかった。帳簿上で数字だけを操作していたのである。

こうして(株)バースデーは、1年間に約250万円を騙し取られていたのである。

新聞業界でなかば慣行化している折込チラシをめぐる詐欺を放置した状態で、新聞社は公権力の不正行為を追及できるのだろうか。

結論を言えば、追及の「ポーズ」を取ることはできても、徹底した追及はできない。中途半端な追及しかできない。逆に追及対象の「権力」から経営上の汚点を指摘され、合法的に犯罪者として処分されかねない情況に追い込まれるだろう。

日本の新聞社が公権力に擦り寄るのも、みずからの経営上の汚点を認識しているからではないだろうか。

軽減税率の問題で新聞人がいくら、新聞の文化性と公共性を強調して、みずからに有益な経営環境を獲得しようと画策しても、ビジネスモデルを検証すれば、ジャーナリズム活動により文化を育てるには、決定的な限界があることが判明する。「チラシ詐欺」と文化は相容れない。

日本人の大半はメディアリテラシーを身に付けていない。新聞社の実態を知らされていない。そのために新聞に掲載される記事に客観性があるものと勘違いする。それが世論誘導に結びつく。