報じられない化学物質イソシアネートの危険性、柔軟剤で体調が悪化、産業界優先の日本の愚民政策(1)
新聞研究者の故新井直之氏が明言を残している。
新聞社や放送局の性格を見て行くためには、ある事実をどのように報道しているか、を見るとともに、どのようなニュースについて伝えていないか、を見ることが重要になってくる。ジャーナリズムを批評するときに欠くことができない視点は、「どのような記事を載せているか」ではなく、「どのような記事を載せていないか」なのである。
このところ研究者を取材する機会が増えている。電磁波による人体影響から化学物資の脅威まで、さまざまな分野の研究者から話をうかがっている。その中である共通点に気づいた。
何が人体や環境に有害かをメディアがほとんど報じないことに対する強い不満と危機感を持っている研究者が多いことである。報じない結果、自分たちが置かれている危険な生活環境を認識することもできない。
日本では、産業界にとってダメージになる情報は知らせない暗黙のルールがあるのだ。「先進国」の中では、日本だけが例外的に「愚民政策」が敷かれていると言っても過言ではない。新井直之氏の言葉を裏付けるようなマインドコントロールが水面下で進行しているのである。
◆何にイソシアネートは使われているのか?
読者は、イソシアネートという化学物質をご存じだろうか。筆者はつい最近まで、この言葉を知らなかった。イソシアネートは、極めて毒性が強い化学物質であるにもかかわらず、工業利用の範囲が広い。
香水から、農薬、 タイヤ、接着剤までイソシアネートを使った商品が日常生活の中に氾濫している。毒性については、後述するので、まず、イソシアネートが何に使われているかを、次の表で確認してほしい。
◆柔軟剤の香が長持ちする理由
用途があまりにも広いので、ここでは読者に身近な柔軟剤の例を紹介しよう。洗濯するときに洗剤と一緒に柔軟剤を入れることは生活の知恵として定着している。柔軟剤は香の成分を含んでいるので好んで使用されるのだ。
ところがその香の成分を閉じ込めるために使われているマイクロカプセル(ミクロン単位のカプセル)の「皮」の原料がイソシアネートなのである。
マイクロカプセルは熱や摩擦で徐々に劣化していく。すると、内側から香が出てくる。その結果、香が長持ちする仕組みになっているのだ。何も知らない消費者は、香が長続きすることで、高い商品価値があると勘違いするのだ。
しかし、空気中に飛散したイソシアネートは、呼吸などを通して体内に取り込まれる。そして人体に影響を及ぼすのだ。
柔軟剤を使った衣服を身に着けている本人はいうまでなく、職場の同僚や学友も、知らないうちにそれを吸い込んでいるのである。イソシアネートが原因の科学物質過敏症になった人は、人混みにはいると、症状を発症することもある。極めて微量であっても、体が反応するのだ。
農薬などもマイクロカプセルの劣化の原理を利用して、効果が長持ちする仕組みになっている。次の写真は、マイクロカプセルの劣化を示している。右が劣化前で、左が劣化後である。
◆イソシアネートによる化学物質過敏症
イソシアネートによる化学物質過敏症では、次のような症状を示す。
◆米国での啓蒙活動
欧米では、イソシアネートの危険性は常識となっており、各種の業界団体をはじめさまざまな公的機関が、リスクを知らせるための啓蒙活動を展開している。次の図は、啓蒙活動を行っている各種団体を示したものである。米国の例だ。
テレビ番組などでも、リスクを知らせている。その結果、多くの米国人がイソシアネートについての常識を共有している。
次の図は、上図の各団体の具体的な活動を示したものである。団体名を色で照合してほしい。たとえば黄色は、「EPA 米国環境省」。オレンジ色は、「DOD米国防衛庁」・・・・。
繰り返しになるが、「不都合なことは知らせない」という愚民政策を取っているのは、先進国の中では日本だけである。