電通の役員に福山正喜・共同通信社長と西澤豊・時事通信社長、博報堂の役員に松田昇・元最高検察庁刑事部長、2015年6月提出の有価証券報告書で判明
企業の役員構成をみると、その企業の体質や方向性が見えてくる。とりわけ外部から役員に加わった人物は、なんらかの戦略上の方針に則して選ばれている可能性がある。
かつて公正取引委員会の委員長を務めた根来泰周氏が電通に再就職(広義の天下り)していたが、電通が根来氏を受け入れた背景には、電通による広告業界の寡占に公取委のメスを入れさせない戦略があった可能性が高い。
■参考記事:機能不全の公取委 歴代委員長が電通はじめ「寡占企業」に堂々と天下り
筆者の手元に電通と博報堂の有価証券報告書がある。その中に役員に関する記述がある。両社の役員人事の中で、特に気になる箇所を指摘してみよう。
※ただし、電通に関しては、2015年11月に公表の新人事が筆者の手元にある。。
参考資料:電通人事
◇時事と共同の現役社長が電通の役員に
まず、電通。2015年6月26日に関東財務局に提出された有価証券取引書の役員欄にある次の3氏に注目してほしい。敬称は略。
【西澤豊】時事通信社の現役社長である。2013年6月から2016年1月まで電通の取締役。
【福山正喜】共同通信社(一般社団法人)の現役社長、編集主幹である。2016年1月から2015年11月まで電通の取締役。
【遠山敦子】元文部科学大臣である。2008年6月から、2016年1月まで電通の監査役。
◇博報堂DY、元最高検察庁刑事部長が取締役
次に博報堂。2015年6月29日に関東財務局に提出された有価証券取引書の役員欄にある次の人物に注目してほしい。敬称は略。
【松田昇】元法務省矯正局長、その後、最高検察庁刑事部長。退官後、2014年6月から博報堂の外部監査役に就任、2015年6月からは取締役。ちなみに2009年には、読売新聞大阪本社の社外監査役に就任している。
◇判検交流の影響は?
地方紙の統括本部ともいえる共同通信と時事通信が電通と密接にむつび着いている状況はおそろしい。紙面そのものが宣伝媒体に変質する危険性がある。
また、最高検察庁刑事部長が博報堂に再就職している事実は、公正・中立な裁判に支障となる危険性を示唆する。検察官と裁判官の間には、「判検交流」制度があるからだ。国会公務委員の退官後の再就職は、禁止すべきだろう。
※判検交流
裁判所と法務省・検察庁の間の人事交流。裁判官と検察官が出向しあって互いの職務に就く刑事分野の交流は平成24年(2012)に廃止。裁判官が訟務検事となる交流は残される。
[補説]日弁連などは、刑事分野の交流のみならず、民事や行政訴訟の国側代理人の訟務検事に裁判官がなることに対しても、癒着や馴れ合いを招き公正を損ねるとして批判している。(デジタル大辞泉の解説)