博報堂と中央省庁、不透明な国家予算の用途、裁判による検証は可能なのか?
国の仕事を発注した省庁と、それを受注した業者の癒着を、裁判を通じて明らかにする方法はあるのだろうか?結論を先にいえば、「NO」である。
筆者は、大手広告代理店と内閣府を含む中央省庁の取り引きで、非常識に高額な取引価格が設定されてきた事実や、それに連動した裏金づくりが行われてきた疑惑を繰り返し指摘してきた。
たとえば2015年度の国勢調査で総務省が博報堂に発注した「広報に関する総合企画の実施業務」である。両者の業務契約書によると、博報堂は全国紙5紙に、述べ25回の政府広告を掲載する予定になっていた。ところが「成果物」を調査したところ、12回しか掲載されていなかった。博報堂もそれを認めた。
理由を問うたところ、「受託業務であり、弊社の判断ではお答えできません」というバカにしたような書面が返ってきた。そこで業務の発注元である総務省に問い合わせたところ、「調査が近づくにつれて『かたり調査』等の発生事案が増加」したので、PR媒体を新聞広告から、広報用ポスターとテレビCMに切り換えた結果と弁解した。(これら2つの宣伝媒体の制作価格は、約2500万円)。
そこで筆者は、テレビCMの放送確認書(CMが放送されたことを示す証明証)を開示するように求めた。これに対して総務省は、放送確認書はすでに廃棄したと答えたのである。
【参考記事】総務省の裏金疑惑、見積書は不存在、2015年度の「放送確認書については、履行確認が終了し、処分した」
他にも博報堂に関する疑惑は山積している。たとえばインボイスナンバーが欠落した請求書を多量に中央省庁へ送付してきた事実である。コンピューターを使った会計システムを導入していながら、博報堂があえてインボイスナンバーを外した事実は、会計監査やシステム監査を回避しようとした可能性を示唆する。つまり大がかりな裏金づくりの疑惑が浮上するのだ。
この点について会計検査院に調査を申し立てたが、会計検査院は、問題はないという結論をだした。こうなれば、裁判を提起して真相を解明する必要があると考え、筆者は、弁護士のアドバイスを受けた。その結果、国家予算の使い方を訴訟で明らかにする制度そのものが存在しないことが分かった。
地方自治体の金については、地元住民による訴訟が可能だが、国家予算のレベルではその制度が存在しないことが分かったのだ。有権者が国会予算の使い方について、唯一、疑義を申し立てることができる機関は、会計検査院だが、問題はあまり調査能力がないことだ。
国家予算の使い方が不透明な最大の理由は、それを裁判によって検証する制度が存在しないからにほかならない。不正を働いても、それを解明できない制度になっているのだ。
国家戦略特区で次々と金銭疑惑が浮上している状況下、訴訟を可能にする制度を構築する必要がある。