1. 内閣府・中央省庁と博報堂の取り引きで大量に存在するインボイスナンバーのない請求書、内閣府だけで4年で64億円、会計監査とシステム監査を受けていない可能性

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2018年04月16日 (月曜日)

内閣府・中央省庁と博報堂の取り引きで大量に存在するインボイスナンバーのない請求書、内閣府だけで4年で64億円、会計監査とシステム監査を受けていない可能性

NNNが4月13日~15日にかけて実施した世論調査によると、内閣支持率が26.7%にまで落ち込んだ。この数字に表れているように、安倍首相の評判は地に落ちた。その背景には、森友事件・加刑事件をめぐる対応や防衛省の日報隠蔽問題があることは疑いない。永田町と霞ヶ関に批判の目が向けられている。

しかし、メディアで報じられている腐敗ぶりは氷山の一角に過ぎない。報じられていないた部分が山積されている。

たとえば、内閣府・省庁と一部の企業の間の取引で、実に奇妙な請求書が当たり前に使われてきたことを読者はご存じだろうか。奇妙な請求書とは、具体的にはインボイスナンバーを外した「手作り」の請求書である。昭和時代の八百屋のような請求書が、当たり前に使われているのだ。

私がこの事実に気づいたのは、2016年だった。博報堂が内閣府に発行した政府広報の請求書の中に、この種のものを多量に発見した。以来、取材をしてきたが、当初は経理に関する知識がなかったので、請求書からインボイスナンバーを故意に外す理由が分からなかった。分からないまま、請求額が異常に高いなどの理由で、国税局や金融庁、証券等取引監視委員会などに、調査を求めた。

しかし、調査は行われなかった。職員は、調査する意欲がないようだった。が、いま考えてみると、高校生でも分かる実に単純明快な疑惑なのだ。

◇インボイスナンバーを外した請求書の異常

インボイスナンバーを外した請求書の何が問題なのだろうか?結論を先に言えば、会計監査・システム監査を受けていない高い可能性である。コンピュータと連動した正規の会計システムとは、別のところで金銭のやりとりが行われている疑惑である。

この点に言及する前に、博報堂と内閣府・中央省庁の間の取引で発行された請求書のうち、インボイスナンバーが外してある請求書の額面総計を紹介しておこう。次のようになる。

内閣府:約64億円(2012年度~2015年度)

防衛省:(陸上自衛隊):約9億円(2008年~2015年度)

文部科学省:約9000万円(2015年度)

復興庁:約2000万円(2015年度)

農林水産省:約300万円(2015年度)

環境省:約1000万円(2015年度)

通常、企業が発行する請求書には、インボイスナンバーを付番することで、コンピュータと連動した会計処理を可能にしている。手動で処理していると大変な労力を要すからだ。会計処理を迅速に進め、しかも不正の防止にも効力がある。

コンピュータと連動したこの会計処理の原理は、クレジットカードのシステムを思い浮かべると分かりやすい。クレジットカードの番号が分からなければ、コンピュータは作動しない。従ってクレジットカードにナンバーの付番は不可欠である。

現在の会計システムも同じ原理で作動している。もちろん、インボイスナンバーがなくても、処理する方法はあるが、それは合理性を妨げるので、なるべく避けるのが一般原則である。従って正常な商取引では、あえてインボイスナンバーを付番しない合理的な説明はつかない。

博報堂の請求書から、インボイスナンバーが外してある事実は、これらの請求書が正規の会計システムとは別のところで、会計処理されている可能性を示唆している。もし、そうであれば会計監査もシステム監査も受けていないことになる。つまりインボイスナンバーを外した請求書で引き出された金は、裏金になっている疑惑があるのだ。

次に示したのが、インボイスナンバーを外した請求書の例だ。

インボイスナンバーを外した請求書の例

博報堂が内閣府に対して発行した新聞広告(広報)に対する請求書である。インボイスナンバーが外してある事実が確認できるだけではなく、金額(総額)も異常に高い。

インボイスナンバーを外した請求書が使われた事実だけで、調査するのが常識なのである。

◇会計検査院へ審査請求

ちなみに筆者は、内閣府と博報堂の取引に関して、会計検査院に審査を申し入れたが、会計審査員は、問題なしとの結論をだしている。

 ■会計検査院への審査請求書

 ■同陳述書

 

【写真】元内閣参与の児玉誉士夫氏。同氏の側近・太刀川夫が博報堂コンサルタンツの取締役に就任していた時期がある。