内閣府がかかえる重大疑惑、実は加計事件だけではない、政府広報費を利用した裏金疑惑、64億円の別会計?
加計学園をめぐる事件で、10日、前川喜平・前文部科学事務次官を参考人招致して閉会中審査が行われる。舞台になるのは、衆参の内閣委員会と文部科学委員会である。これら2つの委員会で、同審査会が行われるのだ。
そのこと自体は歓迎すべきことだが、読者は内閣委員会に関する極めて不可解な事実をご存じだろうか。内閣府が加計学園事件の疑惑の的であるにもかかわらず、先月閉会した国会では、内閣委員会がほとんど休会になっていたのだ。
同委員会の主導権を握る自民党が開かなかったのだ。
これについてはメディア黒書で既報したが、改めて内閣委員会の開催情況を確認してみよう。3月に国会がはじまり、内閣委員会も最初は順調に開催されていた。ところが4月13日から約2ヶ月「休会」になった。国会が閉会する直前の6月7日に再開されたが、この日が最終日となった。
加計学園事件についての質疑応答は、6月7日に行われただけだ。つまり内閣委員会を開かないことで、真相の解明を避けたのである。
このような異常な国会運営がまったく報じられなかったのは、皮肉なことに、内閣府に記者クラブがないからだ。そのため情報がメディアに十分に伝わらなかった。それをいいことに内閣委員会の開催を自民党は避けたのである。
◇内閣府にかかっている重大な不正経理疑惑
さらに内閣府が抱えているもうひとつの重大問題がある。広告代理店を巻き込んだ裏金作りの疑惑である。メディア黒書で既報したように、博報堂が内閣府に提出した広報活動費の請求書(2012年度から15年度)には、インボイスナンバーが付番されていない。故意に外してあるのだ。しかも、請求額は約64億円もの高額になっているのだ。
他の広告代理店の請求分を含めると、加計学園や森共学園に関して疑惑がかかっている金額の比ではない。
何者かがインボイスナンバーを故意に外した理由は、推測になるが、コンピュータと連動した博報堂の会計システムとは別のところで、請求書の事務処理をおこなうことが目的だった可能性が高い。
周知のように、現在の会計システムはコンピュータと連動している。そのためにインボイスナンバーを付番して、見積書、請求書、納品書をひもつきにして、会計処理するのだ。
クレジットカードに番号がなければ、コンピュータ処理できないのと同じ原理である。
これを逆説的に考えると、内閣府の請求書をコンピュータによる経理システムから外すために、何者かがインボイスナンバーを故意に付番しないように指示したともいえるのだ。それにより、内閣府が支払った国費を、非正規の銀行口座にプールすることができる。つまり裏金作りが可能になるのだ。ただし誰がこのような手口を指示したのかはまったく不明だ。
コンピュータと連動したシステムが整備されていないのであればともかくも、システムがあるのに、64億円もの大金をあえて別会計にする合理的な説明はない。
参考までに2015年度分の内閣府の請求書を紹介しておこう。ほとんどが黒塗りになっていて、支払い明細はまったく分からない。書式も、驚くべきことにエクセルである。博報堂の正規の請求書ではない。日付もロゴもない。
筆者は、実は内閣府の不正経理疑惑について、今年の2月末に、『週刊金曜日』に記事を書いた。そのコピーを内閣委員会の全メンバーに送った。金額があまりにも大きいので、この疑惑について考えてもらおうと思ったのだ。
共産党は特にこの問題を重大視して、内閣委員会での国会質問の準備をしていた。ところが内閣委員会そのものが開かれなかったのだ。開催を求めても断られたという。
現在、この問題について会計検査委員が調査しているようだ。
内閣委員会が休会に入ったのが4月13日からであるから、最初はこの経理問題がネックになり委員会が開けなくなった可能性が高い。その後、5月になり加計学園の問題が浮上して、一層開けない状態に陥ったのではないだろうか。
◇内閣委員会の秋元司委員長の言い分
内閣委員会の秋元司委員長(自民)は、これについて次のように弁解した。
委員会を開く場合、関係する大臣の出席を求める必要があるのだが、大臣のスケジュールが重なったために、他の委員会に譲った。しかし、他の委員会で同じテーマが取り上げれらている。「主戦場」を譲ったかたちになった。その方針に野党も合意していた。加計学園の問題も、他の委員会で取りあげられている。内閣委員会では、このようなことがよくある。
苦しい言い訳である。これでは、大臣(主に管官房長官)が出席を拒否したら委員会を開かなくてもいいことになる。自民党が主導する内閣委員会の運営そのものが異常と言わなければならない。
【写真】内閣委員会の秋元司委員長