内閣府だけで4年間で約64億円、インボイスナンバーを外した博報堂の請求書
博報堂が内閣府に送付した新聞広告(政府広報)の請求額は、2012年度から2015年度の4年間で、約64億円になる。この64億円分の請求書には、1枚たりともインボイスナンバーが付番されたものがない。
少額の請求、たとえば5000円の請求書にインボイスナンバーが付番されていないのであれば、不注意で済ませることもできるが、金額が64億円にもなると過信できない。異常というほかない。
ちなみに博報堂がインボイスナンバーを外した請求書を送付してきたのは、内閣府だけではない。既報したように、農林水産省、防衛省、文部科学省、環境省、復興省でもインボイスナンバーを外した請求書が多数確認できる。しかも、それがエクセルやワードで作成されている。
【参考記事】博報堂によるエクセルやワードによる「手作り」請求書、対象は内閣府と中央省庁だけ、地方の「役所」宛ては正常
博報堂が発行したインボイスナンバーを外した請求書の総額を、過去にさかのぼって計算してみると、中央の「役所」分だけでも莫大な金額になる。
◇なぜインボイスナンバーを外すことが異常なのか?
インボイスナンバーとは、請求書に付番されている書類番号である。この番号は、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。
コンピューターと連動した会計システムを導入している企業は、インボイスナンバーを付番することで、合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。もちろん博報堂もコンピューターと連動した会計システムを導入している。
したがってあえて正常な商取引でインボイスナンバーを外す合理的な理由は存在しない。博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか、合理的な理由は分からない。
しかし、法的な観点から見ると、インボイスナンバーを外した請求書の発行が違法行為にあたるわけではない。エクセルやワードの請求書も合法である。請求書の書式が自社のロゴ入りの公式のものでなければならないという法律もない。この点について、取材した税理士は次のように話す。
「違法行為にはあたらないことを熟知した上で、こうした請求書を発行しているのでしょう」
法の抜け道があるというのだ。
◇インボイスナンバーをあえて外した理由は?
と、なれば博報堂は何が目的で、インボイスナンバーを外した(4年で)64億円もの請求書を発行してきたのだろうか。筆者は、次のような疑惑があると考えている。あくまでも疑惑であって、状況証拠から見た推論になるが、大事な点なので指摘しておこう。
結論を先に言えば、インボイスナンバーをあえて外すことで、その請求書から得た収入を、正規の会計システムから外し、収入を申告していない疑惑である。もし、収入を申告していなければ脱税になる。その他にも、裏金などさまざまな疑惑が派生してくる。もちろん博報堂は不正行為を否定しているが、筆者から見れば疑惑が残る。
4年間で64億円にもなる請求額は、全体からみれば氷山の一角である。新聞広告の請求に過ぎない。氷山の一角ではあるが、元をたどれば国民が払った税金なのだ。透明性が確保されなければならない。
ところが情報公開制度を利用して内閣府から入手した請求書は、金額明細のほとんどが黒く塗りつぶされていた。こうした行為により、逆に疑惑が深まったのである。
筆者は繰り返し東京国税局に対して、疑惑があるので調査権を使って調査するように求めてきたが、いまだに動いていないようだ。
また、5月8日に、弁護士を通じて会計検査院に審査要求を申し立てている。
金額が大きいだけに、「横やり」が入らない限り、こちらは調査が行われる可能性が高い。
◇森友・加計よりも高額
メディアでは加計学園事件への安倍晋三氏の関与疑惑が報じられている。その前は、森友学園事件への安倍昭恵氏の関与疑惑が報じられた。安倍夫妻の関与が事実とすれば、韓国のパク・クネと同じ立場に追い込まれるだろう。
しかし、落ち着いて考えてみると、内閣府や中央省庁へ博報堂が送ったインボイスナンバーがない請求金額は、加計や森友の比ではない。同じ腐敗した土壌から、発生しているのである。