電通も関与か?衛星放送局Mnetの(株)ライオン宛ての奇妙な放送確認書、
電通が仲介した(株)ライオンのテレビCMにある重大な疑惑が浮上している。ライオンのテレビCMは、本当に放送されたのだろうか?中抜きされた可能性はないのか?そんな疑問をていする書面の存在が明らかになった。
次のPDFで示すのが、筆者が入手した問題の書面である。
これは、テレビ業界で俗に放送確認書と呼ばれているものである。テレビCMが完成すると、そのCMのコード(10桁)をコンピューターシステムに入力する。そして、そのCMがスケジュールの時間帯に放送されると、コンピューターが自動的にCMコードが入った放送確認書を作成する。放送されないと、CMコードは印字されない。
このようにコンピューターによってCMの放送状況を確認することで、人的な操作による「CM間引き」などの不正を防止するようになっている。1990年代の後半に、静岡第一テレビなどでCM間引きが発覚し、2000年に民放連などが、再発防止を目的に、コンピューターによる放送確認書を作成するシステムを導入したのである。
このシステムは現在は、衛星放送局も含めて放送業界の常識として定着している。広告主は、広告代理店から提出された放送確認書を見て、自社が発注したCMが放送されたかどうかを確認するのだ。
◇放送確認書のWindowsのマーク
次に示すライオンの放送確認書(1ページ目)を見て、読者はどこか違和感を感じないだろうか。
たとえば、CMを流したとされる放送局Mnet(衛星放送局)の住所に注目してほしい。「東京都港区2-7-4」となっているのだが、「港区」の後に、「西新橋」が抜けている。住所が間違っているのだ。
さらに書面の中央にある欄に注目してほしい。この欄に放送されたCMの内容と放送日時などが明記されているのだが、右上に「-」「▭」「×」が確認できる。これらは、読者も知っているWindowsのマークである。
独自のコンピューターシステムが作成したはずの放送確認書にWindowsのマークが表示されていること自体が尋常ではない。
さらに、次に示す動画(2ページ目)を見てほしい。
これは放送されたCM一覧の2ページ目である。末尾に近い位置に記されている放送記録の日付けに、「5月30日」と「5月31日」の日付けが確認できる。つまり30日と31日にCMが放送されたということになる。
ところが放送確認書の1ページ目にある書面の発行日は、5月27日になっているのだ。CMが放送された際に記録されるのが、放送確認書の放送記録であるはずなのに、放送日が30日と31日で、それを記録した書面の発行日が27日になっているのだ。
常識的には考えられないことだ。筆者は、書面の偽造を疑った。書面を偽造してお金を引き出した疑惑がある。しかも、CMは放送されていない可能性がある。
実はこれとうり二つの放送確認書を筆者は、他にも入手している。化粧品通販のアスカコーポレーションから入手したものである。このケースでは、仲介した広告代理店は、博報堂だった。
疑惑のパターンは、アスカコーポレーションの場合でも、先に説明した内容とまったく同じである。参考までに、次の記事を参考にしてほしい。
ちなみに筆者の知人は、ワードを使って、ほぼ同じ報告確認書を作成した。偽造が可能であることを示している。
【参考記事】チャンネルMnetに質問状、放送確認書の偽造疑惑について
◇(株)ライオンの見解
不信に思い、筆者は(株)ライオンの広報部に問い合わせてみた。ライオンの対応は、極めて好意的ですぐに調査して、回答してくれた。次のような内容である。電通との関係については、
「2016年の5月ごろにCMを電通に発注したことはある。」
Mnetについては、
「Mnetに(テレビCMを)申し込んだことはない」
これはある意味では自然なことだ。CM業務を広告代理的に全面的にまかせていれば、広告主がCMを流す放送局を自分で選ぶことはない。広告代理店から報告を受けて、承認するだけだ。その承認も、機械的にやってしまうことが多い。
また、CMの内容について、ライオンは次のように述べた。
「弊社のものではありませんね」
実際、ライオン製品とは関係がない内容が記録されている。たとえば、
「役に立つ男達」
「じゃがいも星」
「シュガーマン」
さらにライオンは次のようにコメントした。
「社内でこのような書類を見た者はひとりもいません。おそらくこの書面は電通とMnetの間のやり取りに使われたものではないかと思います」
ただ、この放送確認書に基づいて、ライオンに対してCM料金が徴収されているかどうかは、現在の段階では分からない。博報堂が関与したアスカコーポレーションのケースでは請求されていた。しかし、この疑惑に同社が気づいたのは、支払いを履行した後の時期であった。やはり広告代理店に業務を全面的に任せていたのだという。
◇電通に内容証明
ただ、この放送確認書に関するCM業務に電通が本当にかかわっていたかどうかは、今後、調査する必要がある。何者かが、電通の名前を勝手に使った可能性もあるからだ。
現在、筆者は電通に対して、内容証明を送り上記の点を確認中である。返答があれば、メディア黒書で紹介する。
一方、Mnetは、取材拒否である。「コメントは控える」とのことだった。
◇CMコードの不在が1500件にも
さて放送確認書をめぐる不信な事件は、後を絶たない。メディア黒書で既報したが、たとえばアスカコーポレーションから筆者が入手した多量の放送確認書を調べたところ、CMコードが入っていないCMが、1508件も見つかった。CMコードが非表示になっているということは、原則的には、CMが放送されていないことを意味する。詳細は次の表の通りだ。
これらはすべて博報堂がかかわったCM取引である。このうち(株)スーパーネットワークは、博報堂が50%の株を有している。
◇放送確認書の代筆
さらにコンピューターシステムで作成されるはずの放送確認書を、博報堂が人力で代筆していたケースもある。繰り返しになるが、放送確認書は、テレビ局がCMを放送した後、みずから発行するものである。代筆はあり得ない。ところが博報堂が代筆した放送確認書が数多く存在するのだ。
次のPDFがその証拠である。朝日放送のものだけでも、少なくとも22枚ある。
◇総務省は放送確認書を破棄
改めて言うまでもなく、放送確認書は政府広報CMでも発行される。たとえば博報堂が2015年度に制作した国勢調査のCMに伴って発行された放送確認書は、2017年3月の段階では、既に廃棄されていた。行政文書の保存期間5年の原則が守られていない。
当然、このケースでも、本当にCMが放送されているのかという疑問が残る。
以上、述べたように放送確認書に関する疑惑が、最近、次々と明らかになっている。広告代理店は、基本的には、国策プロパガンダ(世論誘導)の機関である。それだけに保護されやすく、メスが入りにくい事情がある。ある意味では、「押し紙」問題よりも根深いかも知れない。
【写真】Mnetの本部、東京西新橋