総務省の裏金疑惑、見積書は不存在、2015年度の「放送確認書については、履行確認が終了し、処分した」
総務省が2015年に実施した国勢調査のPR事業で、博報堂が契約した本数の新聞広告(政府広報)をまびきしていた疑惑で新たな展開があった。
この事件は、本来は延べ25本の新聞広告を掲載する契約になっているにもかかわらず、12本しか掲載されていなかったというものである。博報堂も総務省もこの事実を認めている。
ところが契約書に次の条項があり、それを根拠として総務省は、契約は履行されていると主張している。
「第18条 甲および乙は、この契約の締結後、天災地変、法令の制定又は改廃、その他の著しい事情の変更により、この契約書に定めるところが不当となったと認められる場合は、この契約に定めるところを変更するため、協議することができる。
2 前条第2項の規定は、前項の規定により契約金額の変更に関して、協議を行う場合に準備する」
総務省は、何者かが「かたり調査」を行ったので、新聞広告をやめて影響力の強いテレビCMに切り替えたのだと説明している。しかし、「かたり調査」は国勢調査の前から十分に想定できたことである。「おれおれ詐欺」と同様に常に行われているからだ。従って「著しい事情の変更」にはあたらない。
それに契約を変更する際には、「見積書等甲が必要とする書類を作成し、速やかに甲に提出するものとする」ことが義務ずけられているが、何も提出されていない。何度催促しても示さない。
総務省の説明によると、契約変更によって、金額の内訳は次のようになったという。
新聞広告経費▲22,246,000
広報用ポスター(4種類)作成経費 15,000,000
TVCM(かたり調査への注意編)10,440,000
ただし、これらの数字が何を根拠に誰が作成したのかは不明だ。筆者は何度も問い合わせたが、総務省は回答していない。
また、TVCM(かたり調査への注意編)の放送確認書の提示を求めたところ、メールで「放送確認書については、履行確認が終了し、処分しております。」と回答してきた。2015年度の書類を処分したというのだから、尋常ではない。通常、保存期間は5年と聞いているが。不正経理疑惑に揺れる内閣府ですら、2015年度の放送確認書はすべて保存している。
広報用ポスターとTVCMの経費は、裏金になっている疑惑がある。たとえそうでなくても、変更に際して見積書を提出していないのだから、契約違反である。本当に、広報用ポスターとTVCMが制作されたのか、約2500万円の経費がどこへ行ったのかを調査する必要があるだろう。