博報堂事件のCM「間引き」疑惑、CM10桁コードに使用について電通と東急が「衛生放送のCMでも使う」とコメント
博報堂事件の重大な関心事のひとつに、アスカコーポレーションを広告主とするテレビCMが多量に「間引き」されていた疑惑がある。
CM間引きとは、広告主から料金だけを徴収して、実際にはCM放送をスキップする不正行為で、1990年代の後半に福岡放送、北陸放送、静岡第一テレビで発覚して大問題になった。そこでテレビ・広告の関係者が、再発を防止するために、コンピュータがCM「間引き」を監視するシステムを開発・導入した。
それは人的な作業を排したシステムで、コンピュータが人間の不正を監視する画期的なものだった。以後、CM「間引き」は、一切できなくなったというのが、放送界の常識となった。
◇10桁CMコードが意味するもの
CMが放送されると、自動的に10桁のCMコードが放送確認書に印字される。もちろん災害時などの緊急放送でCMが放送できなくなると、放送確認書に、10桁コードは表示されない。このCM10桁コードは、CMが放送されたか、されなかったを判定する唯一の「証明書」と言っても過言ではない。
この場合、放送できなかったCMは、他の時間帯に割り当てられる。その際、償いの意味を込めて、放送回数を増やすなどの「救済措置」が取られる。いわゆる「ペナルティー・サービス」である。
博報堂事件で問題になっているのは、CMコードのないCMが少なくとも1500件も発見されたことである。その大半は、衛星放送におけるCMに集中している。特に著しいのは、スーパーネットワーク社のケースで、現在の段階で、CMコードがないものが900件を超えている。
この問題について、スーパーネットワーク社は、CM「間引き」を否定している。と、なれば放送されたことが前提になるわけだから、当然、「ペナルティー・サービス」も行われていない。
わたしは現段階ではCM価格の調査は行っていないが、広告関係者によると少なくともCM一件につき制作費を含めて50万円ぐらいの料金が請求されるという。900件だと4億5000万円にもなる。
請求の方法は、この事件の特徴である、後付け見積書による請求である。(詳細については、ここをクリック)
◇スーパーネットワーク社とCMコード
7月13日、筆者はCMコードが非表示になった放送確認書について、スーパーネットワーク社に問い合わせた。CMコードが非表示になっている理由について、同社は、民放連に加盟していないから、使用義務はない、と答えた。
会話の意訳は次の通りである。
(最初は、取材拒否を表明した。それから博報堂と相談してから、回答すると、答えた。実際に、[おそらく相談後]先方から電話があった)
スーパーネットワーク:黒薮さんでしょうか。
黒薮:はい、わたしです。
スーパー:先ほど問い合わせがありました放送確認書の件ですが、今、社内で確認しまして、・・10桁コードがなぜないかということですが、基本的に全スポンサーに関してですが、民放連に弊社が加盟していないからです。加盟していないと、10桁コードの義務づけがないものですから、今まで全部、素材と名前で放送確認書を作成してきました。ですから最近、記載していないというよりは、今までがその通りで、10桁コードなしでの素材の確認書をお送りしていました。
黒薮:そうすると放送はされていたということですね。
スーパー:はいそうです。
黒薮:民放連に加盟していないからコードがないと。
スーパー:はい。義務づけがないものですから。ただ、スポンサー名と素材名は記載して・・
黒薮:(アスカ以外の)他社についても、やはりCMコードはないということですね。
スーパー:はい。
◇衛星放送協会の見解
民放連に加盟していない放送局は、CM10桁コードを使っていなのだろうか?この点を調査するために、わたしは、スーパーネットワーク社が加盟している衛星放送協会に問い合わせてみた。
結論を先に言えば、衛星放送協会は、ガイドラインを設けて放送確認書を発行し、そこに人的な手を加えることはなく、放送確認書をスポンサーと広告会社に提出するように指導しているとのことだった。民放連に加盟していない放送局が、CM10桁コードを使っていないということではない。
会話の意訳は次の通りである。
衛生放送協会:黒薮様のおたくでしょうか?
黒薮:はい、わたしですけど。
衛星放送協会:お電話の方をいただいておりまして。
黒薮:ちっとお尋ねしたいことがありまして。
衛星放送協会:はい。
黒薮:CMの間引き問題が出ていますが、そちらの協会の方で防止策など取られているようであれば、教えてほしいのですが。
衛星放送協会:われわれの方ではガイドラインを設けておりまして、放送確認書を発行しています。各社におかれては、そこに手を加えることはなく、きちっと放送されものを放送確認書でスポンサー様に、あるいは広告会社様にお渡ししています。
黒薮:10桁コードに関して、民放連などはCMの10桁コードを使うように徹底しているということなんですが、そちらでも・・
衛星放送協会:こちらの方でも、10桁コードを使用するように推奨して、各加盟社を指導しています。
黒薮:分かりました。この点だけを確認させていただきたかったもので。
◇電通と東急の見解
一方、CMに関する業務では中心的な位置にある広告代理店は、CM10桁ーコードに関して、どのような扱いにしているのだろうか。電通と東急エージェンシーに問い合わせてみた。
これも結論を先に言えば、両者とも衛星放送のCMに関しても、CM10桁コードは使っていると回答した。
電通との会話の意訳は次の通りである。
質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?
【電通】
黒薮:衛星放送のCMについて調べていますが、博報堂さんが作ったCMで、CMの10桁コードが入っていないものがたくさんあるのですが、電通さんの場合は、この10桁コードを使われていますか。他社と比較したいと思いまして。
電通:はい、基本的には使用しておりますが。
黒薮:そうですか。
電通:はい。
黒薮:衛星放送でも使われているということなんですね。
はい:BSの放送で使用しています。
【東急エージェンシ】
一方、東急エージェンシーとの会話の意訳は次の通りである。
質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?
東急:10桁のコードの使用ということなんですが、使用しています。
黒薮:使用されているということですね?衛星放送でも使用されているということですね。
東急:そうですね。
黒薮:ありがとうございました。
◇CMコードの使用はテレビ界の常識
CMコードの使用に関してわたしは、業界団体も含め、随分たくさんの関係者を取材したが、そこから分かったことは、テレビ界では、CMコードの使用はすでに常識になっている事実である。それゆえに、いまの時代にCMの「間引き」はあり得ないというのが、テレビ関係者の常識として定着している。
ところが今年に入って、博報堂が制作したCMが多量に「間引き」されてきた疑惑が浮上しているのである。
さらにCMコードが表示された放送確認書にも別の疑惑がかかっている。沖縄テレビ放送の放送確認書が偽装されていた疑惑である。その根拠については、裏付け資料を入手しているので、改めて詳細を報告しよう。