福島の被災地でもビジネス感覚の博報堂、アスカ支援のクリスマスイベントで「後付け」の高額請求1250万円
2011年3月11日に東北地方に襲いかかった大惨事の後、ボランティアの人々が、北から南から続々と被災地へ向かった。
その中で、ビジネスに視線を光らせるメディア企業があった。電通の最大のライバル、福岡では、電通を撤退させたこともある博報堂である。
◇メディアを巻き込んだ前代未聞の経済事件
博報堂とアスカコーポレーションの係争にみる経済事件では、メディア黒書が指摘してきたように博報堂によるさまざまな「不正」が発覚している。
たとえば通販情報誌を制作する際の博報堂による過去データの流用である。博報堂かテレビ局によるCMや通販番組の「間引き」疑惑である。博報堂がタレント料金が不自然に高くつり上げた疑惑である。さらには、次に紹介するイベントをめぐる「臨時」請求の件も見逃すわけにはいかない。
一見、さまざまな事件が交錯して複雑に感じられるこの経済事件であるが、根底にあるものは単純明快だ。後付けの「御見積書」により博報堂が請求対象にした膨大な業務が正しく実施されていたのかという点である。さらに架空請求や水増し請求はなかったのかという検証点である。
これらの点が裁判の争点になることはほぼ間違いない。司法判断とは別に、筆者は、不正の事実を複数つかんでいる。
◇福島でのクリスマスイベント
2011年12月20日から25日の6日間、JR福島駅の東口駅前広場で「FUKUSHIMA×ASKA Shining Hope Tree」と題するイベントが行われた。これはアスカが被災地支援事業としてスポンサーになって支援したものである。これについては、博報堂のコンベンション・スペース事業部の柳澤博之氏も次のような報告書を書いている。
JR福島駅東口駅前広場周辺では、毎年地元商工会議所が主導する実行委員会により街頭イルミネーションイベント「星に願いを・・★」キャンペーンが実施されてきた。しかし、昨年は東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故の影響により、実施が危ぶまれる状況であった。
一方で、福岡県に本社を置く化粧品会社アスカコーポレーションは、震災発生直後より物資の提供を行うなど被災地支援に力を入れており、その活動の一環として、年末にクリスマスイルミネーションを提供したいという意向を持っていた。
美しいイルミネーションを見た被災地の方々が、その一瞬だけでもつらい現状を忘れて笑顔になれる。そんな機会を提供することで、被害者の「こころの復興」を支えたいという意図である。そして、東北地方でイルミネーション設置の適地を探し中、福島駅前のイルミネーションイベントの窮状を知り、特別協賛として参加することになった。
アスカコーポレーションは、前年の2010年に福岡市内で大規模なイルミネーションイベントに特別協賛して成功させた実績があり、今回はその時に購入した電飾資材の一部を活用して、福島県内最大級となる高さ約13mのクリスマスツリー型イルミネーションを制作するという計画である。
柳澤氏も述べているように、福島のイベントは、「福岡市内で大規模なイルミネーションイベントに特別協賛して成功させた」際に「購入した電飾資材の一部を活用して、福島県内最大級となる高さ約13mのクリスマスツリー型イルミネーションを制作するという計画である」。
電飾資材はすでにアスカが所有していたので、経費はかなり節約できる見通しだった。ところがイベントが終わった後の12月31日付けの後付け「御見積書」を見て、アスカの社員たちは唖然となった。
◇後付の見積書に「約○○円」の「約」を連発
後付けの「御見積書」の請求項目の中に、「暴風対策」「積雪対策」などを理由に、臨時の請求が次々と追加されていたのだ。後付けの「御見積書」そのものがおかしな手続きであるのに、それに加えて、これもまた後付けの臨時の請求が書き加えられていたのだ。赤文字で次のように記されていた。
※暴風対策・積雪対策のためフレーム強化を行い、追加費用約80万円が発生しました。
※設置面に傾斜があったため安全性担保のため傾斜調整・土台調整を実施し、追加費用約100万円が発生しました。
※20日のプレゼント配布数増への緊急対応、23日分追加対応のため保管・アッセンブル・配布費用として追加費用約40万円が発生致しました。
※23日分追加分対応のため緊急の印刷費用として追加費用約5万円が発生しました。
※20日のプレゼント配布数増への緊急対応として追加費用約5万円が発生致しました。
追加請求は総計で230万円になる。内訳は次の通りだ。
暴風対策積雪対策追加費用:80万
傾斜調整土台調整追加費用:100万
商品追加費用:40万
追加印刷費用:5万
警備追加費用:5万
読者は、追加費用の前に付けてある「約」という言葉に違和感を感じないだろうか。「約80万円」、「約100万円」、「約40万円」、「約5万円」、「約5万円」。
通常、見積書に表示される金額に「約」という表現はあり得ない。明細な金額を相手に伝えるのが原則だ。
しかも、「約」を付した金額が、合計請求額に加算されているのだ。
◇「強風・大雪の日はありませんでした」
公的資金による復興事業は別にして、個人や民間企業の多くは、福島の復興支援を無償で行ってきた。アスカによる支援も例外ではない。ところが博報堂は、その支援事業により1250万円の利益を上げている。
しかも、この中には、「暴風対策積雪対策追加費用」や傾斜調整土台調整追加費用」など、本当に必要だったのかを検証しなければならない臨時の請求も含まれているのだ。
こうした実態について、福島でのイベントを企画し、現地入りしたアスカの社員が言う。
「博報堂の後だし見積書からすると12月13日から施工を開始して、26日にイルミネーションを撤収したことになっています。その当時の天気を調べていただくとわかりますが、気温はかなり低かったのですが、雪や風はパラつく程度でした。わたしが現場に入った時も多少雪が降った程度です。13日~26日まで、雪マークの日はありましたが、強風・大雪の日はありませんでした。
しかも、この福島のイベントは、前年福岡の大濠公園で使用したイルミネーション機材を流用することで安くできることを前提に、高くても1000万以内という話が博報堂の営業マンと南部社長の間で行われたと聞きました。
もちろん、復興支援のイベントなので、南部社長の気持ちを受けて、『利は一切取らない』という話になっていたと推測します。ところが博報堂は実際には、暴風や積雪などを理由に250万円を追加請求してきました」
この件についても、取材を拒否している博報堂側の言い分は不明だ。
メディア黒書は、常に反論を歓迎する。
写真出典:福島観光情報
【参考記事】
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