1. 今治市民の6割以上が加計・獣医大学の誘致に反対、永田町で安倍首相の証人喚問を求める集会、右翼グループともみ合いに

共謀罪・戦争関連法に関連する記事

2017年06月09日 (金曜日)

今治市民の6割以上が加計・獣医大学の誘致に反対、永田町で安倍首相の証人喚問を求める集会、右翼グループともみ合いに

共謀罪の創設に反対し、安倍首相らの証人喚問を求める集会が、8日に東京・永田町の参議院議員会館前で開かれた。主催したのは、「共謀罪創設に反対する百人委員会」などである。筆者が取材した3時から5時の時間帯で、印象に残ったことを3点ほど記録しておきたい。

この集会には、加計学園の地元である今治市からも市民がかけつけた。この人の話によると、今治市民の多くは獣医大学の誘致を歓迎していないとのことだった。住民がアンケート調査をしたところ、6割を超える人々が誘致には反対の意思を示したという。

その理由は、有権者の経済的負担である。ひとりあたりの負担は、14万円程度になるという。

メディアは今治市が獣医大学の招致を歓迎しているかのような報道を続けて来たが、必ずしもそうではないようだ。

◇「特区」と新自由主義

ちなみに「特区」とは、新自由主義を急進的に進めるために政府が指定した自治体のことを言う。加計学園の問題が「特区」で浮上したことにより、新自由主義を押し進めている人々の実態が輪郭をあらわした。

新自由主義というのは、「小さな政府」を作り、それに伴い公共のサービスを民営化し、ビジネスを市場原理に委ねていれば、経済は健全に機能するという理論である。科学的な根拠があるわけではない。主観的な思い付きである。

もともと、資本主義は産業革命の時代に低賃金や長時間労働などさまざまな社会矛盾に遭遇した。そこから社会主義の思想が発展して、実際にロシア革命により社会主義国家が誕生した。そこで資本主義の国々が対抗策として福祉国家を構築する方向性を打ち出したのだ。経済活動を「規制」して、資本主義の「暴走」を止めざるを得なくなったのである。秩序を保った資本主義にしなければ社会主義陣営が勢力を拡張するからだ。

資本主義を修正するこの路線は、対症療法としては正しかっただろう。

しかし、経済の規模が巨大化して、市場を獲得するための自由競争が国境を超えてしまうと、従来の「規制」が企業にとって競争の足枷になってきた。そこで規制を撤廃すると同時に、民営化により福祉や公共サービスを切り捨てたりすることで浮いてくる国家予算を、多国籍企業の支援に回す体制が作られたのである。その典型が小泉構造改革だった。事実、この時代から非正規社員が急激に増えた。

安倍首相は、小泉構造改革の継承者である。

さらに海外派兵の体制を作り、米軍と自衛隊により多国籍企業を政変から防衛する体制も構築されたのである。

「特区」は、こうした新自由主義政策の「実験場」である。その実験を名目にして、安倍首相らが利権に群がった疑惑が出ているのが、加計学園事件なのである。

【参考記事】安保関連法案の報道で何が隠されているのか?左派メディアも伝えない本質とは、多国籍企業の防衛作戦としての海外派兵、前例はラテンアメリカ

◇「中国から資金を貰っている」

もう1点、特に記録しておきたいのは、集会の途中に40名ほどの右翼の人々が現れて、女性宮家創設反対の集会を始めたことである。2つの団体が隣り合わせに街宣活動をするわけだから、演説する声がまじりあって、何を話しているのか分からなくなる。

当然、2つのグループが、お互いに場所を移動するように要求した。あちこちで小競り合いが起こり、警察や公安警察が間に入った。

筆者は右翼の街宣車のすぐ近くにいたので、右翼のリーダーの演説がよく聞こえた。驚くべきことに、共謀罪法案に反対し、安倍首相らの証人尋問を要求して集会を開いている人々が、「中国から資金を貰っている」と繰り返していた。このような発言は、名誉毀損裁判になれば、「事実の摘示」に該当し、発言を繰り返したM氏は、みずからそれを立証しなければならなくなる。

◇社会運動の停滞

このところ社会運動が停滞している。特定秘密保護法に反対する運動では、国会を包囲するほどおびただしいの人々が押し寄せてきたが、共謀罪法案や加計学園の問題では、国会議事堂前もいたって平穏だ。

安倍内閣が強行採決を繰り返してきたために、どんなに抵抗しても、最後は「数の力」で押し切られるということを、大半の人々が感じているからだろう。
負けるのなら最初から戦わないという絶望感の支配である。

また、共謀罪法案そのものの中身が知らされていないこともひとつの原因である。メディアにも重大な責任がある。

【参考記事】東京オリンピックの政治利用、共謀罪法案の何が最も問題なのか?